2023年1月15日から21日までの1週間にミャンマーで起きたことです。
▼今週は、ミャンマーからの情報発信が少なかったという印象です。2021年2月1日にクーデターが発生してから2年、日本でも集会がいくつか計画されています。
▼軍事政権が実施しようとしている「総選挙」に対してカレン民族同盟(KNU)中央委員会は、断固反対する立場を貫き、実効支配地域での選挙実施を認めないと決定しました。「兄弟同盟」の一員であるタアン族軍最高司令官が、総選挙の阻止を訴えました。
▼軍事政権は、「総選挙」のための国勢調査を開始しています。彼らは、同時にこの調査を通じて軍に抵抗する者を見つけ出し、捕まえようとしています。この調査に対して大都市部での一部の抵抗グループは、調査事務所への爆弾攻撃、調査員への攻撃などの妨害作戦を行っています。NUGは調査員への攻撃は命令していないとの声明を発表しましたが、行動を共にしている軍兵士への対応は不明です。
▼元国連専門家らのグループが、ロシア、中国だけでなく米・豪・日・仏・独をはじめ各国の45社が、ミャンマー軍の防衛装備品製造工場に対し武器生産を助ける物資を供給していると発表しました。日本製の精密機械も使用されているという報道もあります。
▼また、軍統制下の通信業者ミャンマー国営郵便・電気通信事業体MPTは抵抗する市民やメディアを監視、通信を傍受するデジタル独裁体制の維持に加担しています。”ビジネスと人権リソースセンター” のJustice for Myanmarは、MPTと共同で通信事業を行っている日本のKDDI社と住友商事に対し、MPTに圧力をかけ、応じない場合、事業を停止するよう求めました。
▼ASEAN議長国がミャンマー軍事政権に批判的なインドネシアに交代したことを背景に、2つの動きがありました。(1)日本財団の笹川会長がミャンマー軍司令官の要請を受けてタイ首相と会談したこと、(2)タイ王国軍の最高責任者シーナワット将軍がミャンマーを訪問しミャンマー軍司令官と会談することです。ASEANとNUGとの正式な交流を阻止しようとするミンアウンフラインの意向が働いているとの見方があります。
▼国連難民高等弁務官事務所は、ミャンマー国内での迫害や、環境が劣悪なバングラデシュの難民キャンプから逃れようと船に乗って避難するロヒンギャ難民が、2022年は前年の4.6倍に達し、3,500人を超えたと発表しました。
▼ザガイン地方域の村々への軍事政権の侵攻はつづき、僧院、キリスト教教会を含め多数の民家が焼き討ちされ、多くの地元住民が避難を余儀なくされています。これを阻止しようとする地元PDFと軍との激しい戦闘が起きています。シャン州、チン州でも軍の攻撃が報道されています。
目 次
国内情勢
◆14日、ヤンゴンの繁華街で日本人2人が強盗被害にあい、うち1人が刺された。ミャンマーには去年10月時点でおよそ2400人の日本人が住んでいる。日本大使館が「昼間に徒歩でも襲われる」と注意喚起。
◆軍が権力維持の正当化ために総選挙実施を強行しようとしているとしてカレン民族同盟(KNU)中央委員会は、これに断固反対する立場を貫くことを決定したとパドー・ソオターニーKNU報道官が述べた。カレン州、モン州、バゴー地域、タニンダリー地域のKNU実効支配地域内での選挙の実施を認めない方針。
◆アラカン戦線党(AFP)は、軍が2023年に計画している選挙に参加すると発表。
◆第60回タアン民族革命記念日でタアン族軍最高司令官が演説のなかで、総選挙の阻止を訴えた。この式典に、「兄弟同盟」を構成するコーカン族のミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)、アラカン族のアラカン軍(AA)が祝賀メッセージを送った。
◆ミャンマーの旅券発給業務が完全に停止。 再開の見通しにつき正式な発表はなく、様々な憶測が飛び交っている。 停止の理由について当局からは、システム改善という張り紙以上の説明はない。
◆国家統一政府は、NUG 管轄の人民警察に E 警察署を設置したと発表した。 U Lwin Kolat 内務移民省大臣の声明によると、6 か月前に人民警察が設立されて以来、治安と法執行機関が NUG の支配地域に配置されており、現在は軍事評議会および全国の部下によって犯された犯罪 、 さらには市民が犯した犯罪を記録し、加害者に対して行動を起こすことを目的とした電子警察署が設置された。(BBC Burmese, 2023年1月21日 16:41)
経済ビジネス
◆カチン独立機構KIOの支配地域のカチン州バモー県マンスィー郡インバーパー村近くで、カトリック及びカチン・バプテスト教会の指導者と地元住民約300人が13日、中国が関与する企業が近辺で行おうとしているレアアース採掘に反対するデモを実施。農業等への深刻な影響を懸念し、完全停止に追い込む構え。
人道問題
◆ラカイン州内での軍とアラカン軍(AA)との戦闘の激化を理由に軍は、昨年9月より国際援助機関のラカイン州における避難民に対する支援活動を禁止していたが、1月10日より制限付きで受け入れを再開。UNHCRは10日、ブーディーダウン郡内の避難民3千人に対し日用品等を届けた。
◆17日、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、ボートに乗って生きる活路求め、海で漂流するロヒンギャの数が、2022年は前年の4.6倍に達し、3,500人を超えたと発表。この原因は、「ミャンマー国内での迫害や、環境が劣悪なバングラデシュの難民キャンプから逃れるためで、人身売買や性暴力の被害者も含まれている」という。
軍事政権による恣意的な逮捕、殺害、暴力
◆マンダレー地域ニャウンウー郡NLD議長ウィンミンカイン氏が息子、甥、客人と共に自宅で軍に拘束され、車両1台が接収された。同氏は2015年総選挙で当選経験を持つ。軍側ロビイストのTelegramには避難先からPDFと共に帰宅中だったと書かれている。 クーデター後約2年間でNLD党員1280人が拘束されている。
◆18日午後、ザガイン地方域Katha町で夫婦が逮捕され、ミャンマー北西部の国民防衛隊のメンバーであるとして告発された。夫は血まみれの殴打を受け、顔に血が残っていることを示しており、犠牲者は手錠をかけられ、強制的にひざまずかされた。(Chindwin News Agency, 2023年1月18日 21:15)