“University World News” (https://www.universityworldnews.com/post.php?story=20241210155255366) が、｢Physical university in liberated area」という記事を掲載しています。ミャンマーの解放地域に開設された、CDMに参加した教師・教授が教える物理的（校舎をもち対面で教える）大学についての記事です。知られることの少ない「革命大学」ですが、カチン州総合大学（KSCU）医学部は、今年、ドイツのフランクフルトにあるゲーテ大学と、医学部と看護学部の教育と学習に同大学が協力するという覚書を締結したそうです。
目 次
◆｢解放」地域の物理的な大学が拡大を続けている
ミャンマーで戦闘が続く中、民族武装グループであるカチン独立機構（KIO）が支配するカチン州ライザに、自律的な大学が設立された。
カチン州総合大学（KSCU）は、2022年5月の春の革命中に設立されたので「革命大学」とも呼ばれ、NUGがKIO政府および暫定大学評議会-ミッチーナと協力して設立した最初の物理的な大学である。
KSCUは、クーデター以来、抵抗勢力が支配する地域で運営されている6つの物理的な大学の1つであり、急速に拡大しており、内戦に巻き込まれたミャンマーの多くの地域から学生を集めている。
2022年に文理学部が開設され、看護学部と医学部は経済学部とともに2023年に開設された。今年 (2024年)、工学部を開設した。2025年1月には新しく農業学部が開設される予定。
すべてのプログラムは、クーデタによる軍事政権に反対する市民不服従運動（CDM）に参加した教師と教授によって教えられる。
「(クーデター後の) 革命の時代、KSCUはミャンマー初の現地にある物理的な大学であり、自律大学の1つでした」とKSCU副総長ウ・アウンナイントゥー博士は語った。
「KSCUの学生の大半は国内避難民 (IDP) キャンプの出身です。彼らは2021年のクーデター後に再燃した戦闘の結果、避難を余儀なくされました」と彼は指摘した。
◆地理的に遠い
中国国境近くに位置し、ミャンマーの他の州や地域から地理的に離れたKSCUには約1,700人の学生が在籍している。
同大学には、サガイン地方域のPinlebu、Kanbalu、Wat Lattからの学生も入学している。同地方域では武力衝突が続いており、多くの大学が運営されていないためだ。学生たちは教育を受けるために遠くまで移動しても構わないと思っている、と教員らは語った。
「大学初年度（2022年）は、本土（ミャンマーのその他の中央地域）出身の学生はわずかでした。今年は、2021年以来勉強をすることができない多くの学生が私たちに連絡し、なかには私たちの大学に入学した学生もいます」とアウンナイントゥー博士は語った。
ミャンマー国内の多くの地域では、広範囲にわたる戦闘、大学キャンパスの軍事目的での使用、学校への爆撃により、学生や教育者の学習が妨げられている。
クーデター前のカチン州には約14の大学があった。クーデター後、NUG、少数民族地域の暫定教育評議会、その他の組織が暫定オンライン大学を設立したが、インターネットは当時も今も稀にしか接続できず不安定で、ミャンマー軍事評議会（または国家行政評議会）は過去に、ザガイン地方域などの激しい紛争地域でインターネットを遮断し、モバイルデータ料金を値上げしたことがある。
◆ジャングルの医学部
KSCUの対面授業は、緑豊かな森に囲まれた2階建ての赤い建物で行われる。KSCUには図書館やスポーツ施設もある。
ここにはミャンマーの医学部があり、入学試験で最高得点を取った学生が入学の対象となる。
「KSCUの医学部は、カチン州で最初の物理的な医科大学です」とKSCU医学部学長のキンマウンルウィン教授は語った。
ミャンマーで尊敬される脳神経外科医である彼は、マンダレー医科大学の学長を務め、クーデター後、同大学が「CDM大学」と宣言された際に逮捕を逃れた。
「解放地域にあるKSCUの医学部の設備は、マンダレー医科大学のような大学設備ほど充実していません。
「しかし、彼ら（学生）はまだ3年生なので、（リソースに対する）要求はそれほど多くありません」と彼は説明した。解放地域とは、ミャンマーの軍事政権と戦う少数民族武装グループの支配下にある地域を指す。
キンマウンルウィン教授は、医学部ではCDMの教師のみが教えているが、カリキュラムはクーデター前に存在していたミャンマーの医学大学と同じであり、全国で認められていると述べた。
KSCU医学部は2023年2月13日に開校し、CDMの医学生や、KIOの支配下にある地域に設置された高校の入学試験に合格した学生が通っている。 7年間のプログラムは、6年間の前臨床研究と臨床研究、および1年間の外科医研修期間で構成されている。
2024年、医学部はドイツにあるゲーテ大学フランクフルト（https://www.uni-frankfurt.de/121672223/Unterst%C3%BCtzung_f%C3%BCr_Gefl%C3%BCchtete）と覚書を締結し、ゲーテ大学が医学部と看護学部の教育と学習を協力して監督する。
◆「現地で」学ぶ
CDMの教師と関連教育機関は、抵抗勢力の拠点となっている地域への軍の爆撃にもかかわらず、現地で効果的な学習を提供するために多大な努力を払ってきたと述べた。
ミャンマー東部のカレンニー（カヤー）州では、抵抗勢力から土地を奪還するために軍が進軍を続けているが、先月、カレンニー医科大学が物理的に設立された。
Demoso郡区の西にあるカレンニー（カヤー）州初の医学校は、2024年11月20日にジャングルの茅葺き屋根の建物で、最初の37人の医学生とともに授業を開始した。
NUGはまた、マグウェ地方域にアウンサン総合大学、ザガイン地方域にChindwin総合大学を設立した。この地域は、3年間の内戦中に軍が民間人に恐ろしい攻撃を加えてきた地域である。この大学も仮設の茅葺き屋根の建物で運営されている。
アウンナイントゥー博士は、KSCUのカリキュラムはアウンサンスーチー国民民主連盟（NLD）政権時代に改革された高等教育カリキュラムに基づいており、いくつかの更新と新しいコースが追加されていると述べた。
◆将来の連邦大学のモデル
ミャンマーが2011年に軍事政権から民主政権に移行した際、教育改革は当時のNLD政権の優先事項であった。しかし、クーデター後、進展は止まった。
KSCUの教師はミャンマー全土のさまざまな大学から集められている。「ボランティア」とも呼ばれる一部の講師は、クーデター前に修士号を取得したが、軍事政権下の大学で働くことを拒否した。
「大学設立当初は、教師が6、7人しかいなかったため、大変でした。採用は相互信頼に基づいています。現在、合計で76人の教師と22人のスタッフがいます」とアウンナイントゥー博士は述べた。
「私たちは、KSCUをさまざまな民族地域で設立される将来の連邦大学のモデルとして提供するために全力を尽くしています」と彼は述べた。