クーデターから1年:軍事政権に抗議するサイレント・ストライキ

2021年2月1日、ミャンマー国軍はクーデターを起こしてアウンサンスーチー氏をはじめ政権幹部やNLD指導者たちを拘束し、軍事力を使って政権を乗っ取りました。
それから1年になる2022年2月1日に向けて、ミャンマーの国民に「沈黙の抗議 (サイレント・ストライキ)」が呼びかけられていました。

Tayzar San博士の呼びかけです。

Tayzar San 博士は、2021年2月4日マンダレーで、全国に先駆けて街頭抗議行動に立ち上がった指導者です。2021年4月19日に軍事評議会は煽動容疑で彼の逮捕状を発行しました。そして、彼の逮捕につながる情報に対して1,000万チャットの報奨金を提供し、躍起になって行方を追っています。彼はいま、安全な場所にいます。

クーデターの記念日(2022年2月1日)に、私たちはすべての国民に対し、以下の反権威主義運動に参加することを強く求めます。

《沈黙の抗議》

世界で最も大きな音は、沈黙の音だと言われています。
私たち国民は、ファシストの独裁者を追い出す沈黙のストライキを聞くよう、全世界に向かって叫びます。

これは世界でも珍しいストライキであり、国民の団結によってのみ全国レベルで行うことができます。
私たちは静かです。沈黙は恐れです。冷血ではありません。

私たちは、私たちの街、私たちの村の主人公です。
私たちはテロリストに、私たちは行動するときは行動するのだということを知らしめるでしょう。

それは、全国がひとつ団結する「独裁政権に反対する大衆運動」です。
当日は、午前10時から午後4時まで、私たちは全員屋内に留まり、外出しません。

テロ政権によって殺された人。私たちは代償を払わなければならない。
私たちは刑務所にいる仲間と連帯します。私たちは愛を分かち合います。

そして、家にいる間、革命のために、これまで以上にPDF(国民防衛隊)をクリックしてください。

《拍手の抗議》

沈黙の抗議の終わり(正確に午後4時)には、全国のすべての人々からスタンディングオベーションがあります。
ファシストが衝撃を受けるファシストへの拍手が沸き起こった後、抗議は続きます。

この抗議は、テロリストのファシストにとって弔いの鐘であり、私たちの国民にとっては勝利への前奏曲です。

以上、Tayzar San 1月22日 22:57  より。

軍事政権は「沈黙」を恐れた

軍事政権は、商店の事業主に当日店を開けないと処罰するなどと脅迫したり、ストライキは中止されたというフェイクニュースを流したり、サイレント・ストライキを阻止しようと躍起になっていました。

ヤンゴンではこんな計画を企んでいました。

第一に、ヤンゴンの各郡区で軍事政権によって任命されたブロック管理者は、2022年2月1日の午後0時から午後4時まで、軍事政権の1周年を記念して国内最大の都市ヤンゴンの真ん中で開く集会に、1つの郡区から各100人を動員するよう命じる。
第二に、軍事政権は、2月1日は、大型ショッピングモールのすべての空いている店を開くように命じる。
第三に、軍事政権はインセインでCOVIDワクチンを接種することを計画しており、ブロック管理者に、昼も夜も、拡声器をつかって周知させる。
市内の市役所で働く公務員に、2月1日の日中に外出して、店で食べ物を買うように命じる。

“Lists of Myanmar military junta and pro-military group’s plans to disrupt the planned ‘Silent Strike’” by THE CHINDWIN, January 31, 2022 より。

2022年2月1日の各地の光景

ミャンマー各地の通りには人影がなく、市場には開くよう強制された数店が見られるだけで、買い物客の姿はありません。

軍事政権に反対するミャンマー国民の意思は、このサイレント・ストライキの成功によって、世界に示されました。

ミャンマー各地
ヤンゴン
マンダレー
モン州
ザガイン地方域
マグウェイ地方域
バゴー
世界遺産バガン
カチン州Myitkyina

現在の情勢を、どう考えたらいいのか?

Tayzar San博士が、質問に答えています。

軍事政権は、暴力的な取り締まり、逮捕、拷問、殺害で野党運動を抑制しようとしました。しかし、国民の抵抗は強いままです。何故ですか?

この革命は非常に強力で、まともで、意味のあるものだからです。
国民はこの革命を、70年以上にわたって国に災害をもたらしてきたテロリスト軍を根絶するための最後の戦いと見なしています。

私たちは、次の世代が私たちや前の世代が経験したのと同じ苦しみを経験することを望んでいません。
国は最終的にそうした苦しみから完全に解放されるべきです。
そしてそれが、この最後の戦いで私たちの命を犠牲にする価値さえあると私たちが信じる理由です。

したがって、政権が致命的な力、残忍な取り締まり、拷問、暴力を使用したとしても、私たちは決してこの革命から立ち止まったり後退したりすることはありません。彼らが私たちを抑圧すればするほど、私たちは立ち上がるでしょう。

革命の進展に満足していますか?

とても満足のいくものだと思います。
なぜなら、私たちの国民は、世界で最も残酷で抑圧的な独裁者に、自らの力だけで直面しているからです。

彼ら[政権]は、その管理メカニズムを実行しようと力ずくで試みましたが、それでも失敗しました。
また、国民を代表するNUGと連邦議会代表委員会(CPRH)があり、国民の支持を得て国民統一の象徴としてNUCCが結成されました。

私たちの歴史の中で、これは国民が最も団結した時代です。
同時に、テロ体制は海外で孤立しています。

私たちは、このテロリストの軍事政権を打ち負かそうとし続ける必要があるだけです。

以上、‘Interview; Myanmar’s Revolution Against the Junta Will Definitely Succeed’ by THE IRRAWADDY, 3 January 2022 より

2022・2・1 サイレント・ストライキに関連する記事

An anonymous Myanmar-based contributor, “Poking the Bear: The Military’s Attempts at Pre-empting the Silent Strike.” by TEACIRCLEOXFORD POSTED ON FEBRUARY 4, 2022 から一部を紹介します。

軍事クーデターの1周年がもうすぐ迫るなか、国中の人々は、反軍事活動家がその悲劇的な日を記念するために私たちにどのように呼びかけるか、待っていました。
長く待つ必要はありませんでした。1月22日、多くの人が望んでいた呼びかけがソーシャルメディアへの投稿という形で届きました。

2月1日、すべての事業を閉鎖し、人々が家にいることを要求するサイレント・ストライキが開始される。

ストライキのニュースは、ソーシャルメディア、電話、報道機関、口コミを通じて全国に急速に広まりました。
自称首相であり、軍事政権の組織である国家行政評議会の長であるミンアウンフラインとその仲間たちが反応するのに、それほど時間はかかりませんでした。
計画されたストライキの1週間前に、彼らは人々に対するさらに別のテロキャンペーンに着手したのです。

■ストライキに参加した人々は深刻な影響を受けると、軍事政権は脅迫した。テロ容疑では最長10年の懲役が科され、扇動の場合は20年の終身刑が科される。その他の容疑には、3年から5年の懲役が伴う。

政権は数週間前に、人々によるそのような抵抗を防ぐための措置を取り始めたようです。

■12月、インターネットサービス利用料を2倍に引き上げた。

■1月8日、SIMカードに追加の税金を課した。以前は1,500チャットだったのが、1,333パーセント増加。

■2月1日の10日前に、ストライキの直前の3日間(1月29日、30日、31日)は午前6時から午後6時まで電気を切ると発表。この3日間はほとんどの人が自分のコンピュータや携電話・スマホ充電の電源をもっておらず、WiFiがなくなる。

■8日前の1月24日に、ミャンマーのテレビ宣伝機関であるMyawaddy TVとMRTVが新しい制限を発表。仮想プライベートネットワーク(VPN)アプリを所有している人は誰でも逮捕し、罰金と最長3年の懲役刑の対象になる。

■多くの地域で、屋根にラウドスピーカーを取り付けた車両が巡回し、ストライキに参加すると法律に違反することを警告した。

■警官、兵士、および軍が任命した区の管理者は、ストライキの日である2月1日に店を開いたままにすることを約束する契約に店の所有者が署名することを強制した。

このサイレント・ストライキによって、ミャンマーの人々は、ミャンマーへの投資は真の民主的安定が得られるまで決して利益をもたらさないこと、そしてそのような安定は人々の手に直接委ねられていることを世界に示しました。

軍がサイレント・ストライキを鎮圧するためにあらゆる努力をしたにもかかわらず、ストライキ当日の全国の通りに人けがなかったことは、ミャンマーの人々が暴君の下で苦しんでいる間、将軍と取引を続けている人々への警告として役立つはずです。

ストライキが成功した今、軍がどのように対応するかは不明であり、誰もが懸念するはずです。
しかし、人々を恐怖に陥れる試みが人々の反抗を思いとどまらせるのに効果がないことは、すでに証明されています。

ミャンマーより、つれづれなるままに (Japanese diary from Myanmar)」2022年2月6日日曜日 3:55 から一部を紹介します。

当サイトの投稿「CDM参加の医師」で紹介させていただいたミャンマー在住者によるフェイスブックページ 「ミャンマーより、つれづれなるままに (Japanese diary from Myanmar)」が、ナマの声を紹介しながら、厳しい状況にあっても逞しく抵抗し、軍政にNO!と突き付ける現地の人たちの姿を伝えてくれています。

以下、作者からの許可をいただき、感動したところを紹介します。ぜひ、リンクから全文のご一読をおすすめします。

「サイレントストライキは、地味な抵抗だと思うだろう。
だけどこれは、国民がみんな同じ気持ちをもっていないと成功しないんだ。
軍の支配なんてだれも望んでない、という強烈なメッセージなんだよ。
僕らはそれを成功させたんだ」
「こんなにもたくさんの人が、軍政にNOと意思表示している。
軍と同じようにお金と武器があれば、絶対にすぐに勝つのにな」

ストライキが終わった当日、電話でのミャンマー人の友人のことば。

逮捕者はでましたが、少ない犠牲で、軍政に反対する多数の国民の意思を示したことは、まさに「強烈なメッセージ」だったと思います。

「この1年、私たちは何度も立ち上がり、声をあげて続けてきた。
 たくさんの犠牲を払ってきた。でも変わらない。
 この状態で1年…。
 もう軍政を受け入れるべきなのかな?って考えてみた。
 でも、ダメ。答えは絶対にNoだよ」
「だけど、少なくとも私たちは、諦めるわけにはいかない。
 ここで何もせずに軍に従ったら、次の世代がかわいそうだもの。
 私たちが、軍政下で育った最後の世代。必ずそうするからね」

翌日、別の友人(女性)のことば。

彼ら/彼女らへの支援をつづけましょう。

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クーデターから1年:軍事政権に抗議するサイレント・ストライキ

クーデターから1年:軍事政権に抗議するサイレント・ストライキ」への2件のフィードバック

  1. ミャンマーの人びとが民主主義を勝ち取ることができます様にお祈りしています!

    1. Shirotaka Ishida様
      ミャンマーの国民が置かれている状況に、心が痛みます。
      早く、ミャンマーに民主主義を取り戻し、各民族がそれぞれの伝統を生かしながら、新しい国家を建設するよう祈ります。
      支援をつづけたいと思います。

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