2023年7月16日から7月22日までの1週間にミャンマーで起きたことです。
▼ミャンマー軍トップは、国が安定していないとして、非常事態宣言のさらなる延長を示唆した。また、「アウンサンスーチー氏がNUGとPDFを支持していない」という虚偽の内容を書いた宣伝ビラを全国に配布した。
▼軍事政権は、高さ約25m、総工費3000万ドル(約42億円)を超す巨大仏像を首都ネピドーに建設した。また、仏像建立と縁起がいい白象誕生1年を記念して2万チャット(約1300円)の新札発行を発表。
▼カチン州で少数民族武装組織と対峙している軍事政権北部軍管区司令官、副司令官を含む軍幹部6人がネーピードーに召喚され、敵に融通を図った容疑で事情聴取を受けている。
▼アウンサン将軍が6人の閣僚とともに暗殺された1947年7月19日を記念し、CRPHとNUGが共同で19日に「第76回殉教者の日」記念式典を開催し、一般にもオンラインで公開した。
▼NUGは軍事政権傘下の銀行への外貨流入を阻むため、仮想通貨によるオンライン銀行「Spring Development Bank」運用開始を準備中。
▼NUGは軍事政権が外国に預託しているミャンマー外貨準備の引出しを阻止するため、世界銀行など国際金融機関との連携を発表。
▼バゴー地方域ダイウー刑務所に収監されていた政治囚37人が、移送を発表された6月27日以降行方不明となり、うち6名の死亡が確認された。政治囚への拷問・惨殺がエスカレートしている。
▼ザガイン地方域で、村を襲撃した政権軍が村民11人を殺害、地元PDFメンバー3人を斬首。
▼EUが軍評議会に対し新たな制裁を発表。軍評議会の任命する連邦大臣3名、軍評議会メンバー2名、軍情報機関トップの計6名に加え軍営の鉱業系企業1社が対象。
▼軍事政権軍部隊によるザガイン地方域の村々への襲撃、重砲や航空機による攻撃、放火が続き、多数の住民が逃亡している。
国内情勢
◆ミャンマー軍トップ、非常事態宣言のさらなる延長を示唆。総選挙も先送りになる可能性。
◆軍は、アウンサンスーチー氏がNUGとPDFを支持していないという虚偽の内容を書いた宣伝ビラを全国に配布した。
◆カチン州ミッチーナー市の北部軍管区司令部の司令官コーコーマウン中将、副司令官を含む軍幹部6人と翡翠商人1人がネーピードーに召喚され事情聴取を受けている。司令官の許可で翡翠事業の名目で弾薬を運ぶ車両が見つかり、これが少数民族武装組織に渡っているとの容疑。
◆18日、東部モン州モーラミャイン市で大雨の影響で洪水が発生。100世帯が避難。
◆国際ジャーナリスト連盟IFJは18日、声明を発表し独立系メディアDVBとMizzimaに対し、軍部が提訴すると脅迫していることを不当だとして非難。軍は、クーデター前に国営放送MRTVで両局の番組を放送した際の放送料が未払いであると主張。独立系メディアは、2021年3月8日にライセンスを剥奪されている。
◆19日の第76回殉教者の日には、CRPHとNUGが共同で記念式典を開催する。 式典の模様は、一般の人々が式典を生で視聴できるように、同時中継される。1947年7月19日に、ビルマ独立の指導者だったアウンサン将軍が6人の閣僚とともに暗殺された (National Unity Government of Myanmar, 2023年7月18日 20:04)。
◆ロシア国営の武器輸出会社Rosoboronexport社のCEO、Alexander A. Mikheyev氏が19日、アブダビからネーピードーを秘密裏に訪問。ミャンマー軍上層部と面談を行い、20日午後1時頃に帰路についた。
◆21日、軍事政権は首都ネピドーに建設した、高さ約25m、重量約53000トンで、総工費3000万ドル(約42億円)を超す巨大仏像を報道陣に公開した。
◆軍事評議会は、新しい2万チャット紙幣を発行すると発表した。
経済ビジネス
◆クーデター発生から2年半の間に自動車の国内価格が5倍に。現在業務用車両以外の自動車の輸入が禁止。ノックダウン方式の車両組立てやスズキ車の国内生産も停止。スズキエルティガの新車の価格は1億3千万チャットに。軍が金販売業者やドル両替商を逮捕した影響で自動車販売に投資する投資家が増えたのも一因。
◆ザガイン地域カンバルー郡、チュンフラ郡、コーリン郡の25村で今年の3月11日から電力供給が止められている。村では脱穀機や搾油機を電力に頼っており、生活用水の確保にもポンプの組み上げが欠かせないため、高額を支払って自家発電機をレンタルしなければならず、大変な苦労を強いられている。
◆NUGは20日、軍事政権が運営する銀行への外貨の流れを遮断する目的で、仮想通貨とブロックチェーン技術で運営されるオンライン銀行 ”Spring Development Bank” を立ち上げる用意があると発表。22日に利用者1000人、管理者100人を対象に試験運用を行う予定。NUGが発表したSpring Development Bank の定款。
◆NUGの財務・計画・投資大臣は、軍事評議会が外国に預けたミャンマーの外貨準備の引き出しを阻止するため、世界銀行などの国際金融機関と連携していると発言。
人道問題
◆マグェー地域イェーザジョー郡イェーレー島内の20村で昨年から続く軍の侵攻と抵抗する市民との間の戦闘から逃れて避難生活を送る市民が、エーヤーワディー川の水位が上昇していることで更なる避難を余儀なくされている。また雨除けのためのビニールシートや竹が著しく不足。食料不足にも苦しんでいる。
軍事政権による恣意的な逮捕、殺害、暴力
◆バゴー地域ダイウー刑務所に収監されていた政治囚37人が、ダイウー刑務所移送すると発表された6月27日以来行方不明になり、うち6人の死亡が確認されたと政治囚支援協会AAPPが19日に発表。 また同刑務所に収監されていたウォー郡の地域議会議員マウンディー氏が健康状態が悪化し移送された病院で息を引き取った。収監中の政治囚の死亡が相次いでいる。
軍事政権による国民・財産への攻撃
◆ミャンマー軍事政権は、民衆に対する殺人、強姦、拷問、民族浄化の罪で告発されている。 軍事政権は戦争は存在しないと主張しているが、SkyNewsの国内独占潜入調査により、民間人コミュニティが日々砲撃や空爆の標的にされ、家を追われていることが明らかになった。
◆ザガイン地域ミンムー郡の8村を6日より軍部隊が侵攻。住宅600棟近くが全焼し、住民15人を拘束した後、殺害。うちナベーチュー村の住民4人は焼殺されたという。16日にはサッピャージン村に拠点を置く軍部隊がヨンカー村、カンズェー村を襲撃。住民4人を拘束し、人質として連れ去った。
◆17日午前11時頃、ザガイン地域シュエボー郡タカンター村およびその周辺の村に、軍が飛行機で焼夷弾を投下。これにより住宅が燃え、住民らが退避。さらに逃げ惑う住民を飛行機で追いかけて機上掃射を行った。
◆ザガイン地域イェーウー郡とディペーイン郡間に位置する村に軍が侵攻し重火器で攻撃したためイェーウー郡南部の10村超の住民が村から退避。同部隊は、ディペーイン郡方面に進行するものと思われたが、進路を変え再びイェーウー郡を侵攻したため、住民らは再び村を離れることを余儀なくされた。
◆ザガイン地域カレー市の北部の村を軍が19日夜間、重砲を3発撃ち込んで攻撃。村内の住宅1件が損壊。20日にも同市内の灌漑局付近に軍が拠点を構え、周辺の村を重火器で攻撃。戦闘は起きていなかった。
◆ザガイン地方域Yinmabin町に駐留する部隊は21日未明にSone Chaung村を襲撃し、村を警備していたBo Tun Tauk PDFのメンバー3人を斬首した。その後、彼らは村民の男性11人を殺害した。2021年以来、1件の事件で少なくとも5人の民間人が殺害された143件の虐殺が記録されている。殺害された人数は 1456 名にのぼる。
◆2021年のクーデター以来、ミャンマー国軍による砲撃や意図的な焼き討ちが繰り返し行われ破壊しつくされたチン州サントランの町。
国際関係
◆国際刑事裁判所ICCのカーン首席検察官が4日間バングラデシュを訪問し、ロヒンギャ虐殺の生存者から証言を集めた。氏は、「ロヒンギャキャンプは悲痛な状況だ。ここにいるロヒンギャのために正義が加速されなければならない。彼らには正義を手に入れる権利がある」と語った。
◆人権団体ヒューマンライツウォッチによれば、マレーシア・クアラルンプールを拠点とする労働委員会の委員長としてミャンマー問題に取り組むトゥーザーマウン氏一家5人が4日、自宅に侵入した何者かに拉致されたまま消息を絶っている。本国でイスラム教徒への弾圧が激化したことでマレーシアに移住した。
◆欧州連合EUが軍評議会に対し新たな制裁を発表。軍評議会の任命する連邦大臣3名、軍評議会メンバー2名、軍情報機関トップの計6名に加え軍営の鉱業系企業1社が対象。内容はビザ発給停止、資産凍結等。EUは軍への武器、通信機器の売却、軍関係者への研修の実施等を差し止めている。
◆軍管理下の国営紙によれば軍傘下の選挙管理委員会のテインソー議長率いる代表団が23日に実施されるカンボジアの総選挙視察のためにカンボジア入り。5日間の滞在期間中に選挙の運営、投票、開票を視察する。フンセン首相の在任期間は世界最長で選挙は野党が排除される仕組み。