2022年10月16日から22日までの1週間にミャンマーで起きたことです。
▼各地で爆弾・爆発事件が起きている。19日にはヤンゴン市インセイン刑務所前で爆発が2回起き、差し入れに来ていた収監者の家族(女性)5人と刑務所局職員ら計8人が死亡し、18人が負傷した。亡くなった家族には、全ビルマ学生連盟の元メンバーのコー・ジェイムズ氏の母親も含まれていた。
▼この事件を受けてSAC内務省は、全国の刑務所における収監者への差し入れを無期限に禁止する命令を出した。収監者は、食事、医薬品、日用品を家族の差し入れに頼っているため、栄養失調や健康障害の懸念が心配されている。
▼Special Task Agency of Burma (STA)という組織がインセイン刑務所爆発事件の実行声明を出したが、NUGはじめ民主化諸組織はこの爆弾事件に対して非難あるいは処罰するとの声明を相次いで発表した。
▼軍は、ザガイン地方域、マグウェ地方域、ラカイン州の村々への襲撃をつづけている。10月14日~15日にはザガイン地方域で大規模掃討作戦を実行し、新たに2万人以上の避難民が発生。各地で家が焼き討ちにあい、多くの地元住民が避難を余儀なくされている。
▼カレン州コーカレイ市で21日、カレン民族同盟 (KNU) 傘下のKNLA-PDFの合同部隊と軍との間で激しい戦闘が始まった。 既にコーカレイ市内の政府機関を占拠し、さらに軍大隊基地攻略をめざすKNU側に対し軍は、重火器や複数の戦闘機で攻撃。市民2人が死亡、10人が負傷。
▼資金洗浄などを監視する国際組織FATFが、資金洗浄対策が不十分だとしてミャンマーをブラックリストに載せた。これによって国外との送金など金融取引が滞り、経済がさらに悪化する懸念がうまれている。
国内情勢
◆15日、モン州チャイッティーヨー・パゴダ登山口のキンモンチャウン村に駐屯する軍部隊を何者かが襲撃。警察署内に詰めていた軍部隊が反撃し、銃撃戦となった。12日にも何者かによる襲撃により市民が犠牲になる事件が起こっている。
◆15日午前中、ヤンゴン市チーミンダイン郡区裁判所で爆発事件が発生。裁判所の建物の窓ガラスが割れた。 車両5台で到来した軍が周辺の道路を封鎖し、検問を実施している。小型乗用車と若者をより入念に調べているという。
◆シャン州復興協議会(RCSS)は10日、シャン州内の他の武装組織に対し戦禍の中にあるシャン州住民の状況改善、組織間の相互理解を深めるための対話の席につくよう求める声明を発表。SSPPは発表翌日にRCSSの攻撃を受けたと非難。PNLOも発表後にRCSSと戦闘に発展したと指摘。
◆13日に連邦団結発展評議会(USDP)カレン州パアン県議長が何者かによる銃撃を受け死亡した事件に対する軍・警察当局の対応ぶりについて、警護に失敗したばかりか、多忙を理由にいまだに捜査を開始しておらず、KNUとPDFどちらの犯行かも特定できていないとUSDPパアン県支部のメンバーが批判した。
◆15日夜間、カレン州ミャワディ市内のミャワディ市場とミャワディ郡のタイ-ミャンマー友好橋付近に、ほぼ同時に爆弾が落下。 その後、軍が銃の乱射を開始。 爆弾の落下により男性1人が手に軽傷を負った。
◆18日、国民統一政府 (NUG) の第72回閣議が開かれ、移行期間中の憲法改正の問題等が検討された (National Unity Government of Myanmar, 2022年10月18日22:17)。(なお、7日の会議でNUGが策定した「2023年に民主化革命を成功させる計画」に対して、ザガイン地方域の一部のPDFからは、武器がない状況では達成することはとうてい無理だという批判が出ている。)
◆12日にモン州チャイッティヨー(ゴールデンロック)・パゴダの登山口付近の軍の料金ゲートが何者かにより襲撃された事件で、発砲を受けて死亡した市民3人の初七日の合同法要が地元市場商人の主催で18日に行われた。 仏教行事ダティンジュ祭りの期間で参拝客が多い時期だった。
◆ザガイン地域キンウー郡内のエーヤーワディー川を航行中のボートを地元PDFが調べたところ、麻薬が発見されたため、運搬にあたっていた男性2人の身柄を確保した。
◆国民統一政府 (NUG) は10 月 15 日、ザガイン地方域Katha郡区に最初の地方裁判所の 1 つを開設した。
◆19日、ヤンゴン市インセイン刑務所前で起こった爆発およびその後の軍兵士による無差別発砲で、犠牲者の数が8人になった。2回の爆発で刑務所局女性職員1人、男性職員1人、差し入れに来ていた収監者の家族(女性)5人が死亡した。Special Task Agency of Burma (STA) が実行声明を出した。しかし、STA のほとんどのメンバーは拘留されており、そのソーシャル メディア ページも政権の管理下にあるため、多くの人はそれが軍の行為であると信じている。
◆19日午前9:40にヤンゴン市インセイン刑務所前で爆発が起こり8人が死亡、18人が負傷した事件で、死亡した市民の中に収監者への差し入れに訪れていた全ビルマ学生連盟の元メンバーのコー・ジェイムズ氏の母親が含まれていることが分かった。コー・ジェイムズ氏は反軍活動を行ったことで収監されていた。
◆多くの死傷者を出したヤンゴン市インセイン刑務所前での爆発事件を受け、SAC内務省は全国の刑務所における収監者への差し入れを無期限に禁止する命令を出した。 収監者は、食事、医薬品、日用品を家族の差し入れに頼っているため、収監者の栄養失調や健康障害が引き起こされることを家族が懸念。
経済ビジネス
◆英マークス・アンド・スペンサー (M&S)、来年3月までにミャンマーからの調達を停止すると発表。
◆ラカインの国営銀行と民間銀行は、Buthidaungと Maungdaw間の道路と水路が封鎖されているため、ミャンマー軍のヘリコプターで資金を輸送している。
◆ミャンマー中央銀行 (CBM) は、ソーシャル ネットワーク上で無許可で外貨を取引する者に対して措置を講じると発表した。国内の公式外貨両替所をリストアップし、無許可のディーラーに訴訟を起こすと警告した。
◆国境での人民元建て直接決済が8月までに、1900億元 (約3兆9,250億円) に達した。
人道問題
◆ヤカイン州北部でアラカン軍(AA)-軍間の戦闘が頻発していることで、世界食糧計画(WFP)からの支援が届かなくなり、生活を全面的に支援に頼っていたヤテダウン郡アナウッピン村とニャウンビンジー村の住民(ムスリム)約3千人の生活が困窮。 軍は9月から北部地域での国際機関の活動を禁じている。
◆いくつかの重要な真実を表すイラスト: 軍の4カット作戦にさらされたミャンマー中部の人々の信じられないほどの苦しみ。これは少数民族の苦しみに対する理解を生み出しました。そして、軍隊は文字通りその兵士供給地を放火して燃やしている。
◆UNHCRの10/3付の報告書によれば、軍と地元防衛隊との戦闘で9月最終週だけで1800人の市民がミャンマーからインドのミゾラム州に避難。計約4万8千人が約30箇所で避難生活を送っている。避難民キャンプでは食料、医薬品が不足。子どもは言語の問題で学習困難。間もなく気温が下がるため毛布も必要となる。
◆チン州パレッワ郡の市民が教育委員会を組織し、委員会の主導で郡内の約60村に市民の運営による臨時教育校60校を開設。インド・ミゾラム州の避難民キャンプにも9校が開設された。生徒数は約5千人(大半が小学生)、教員数は約200人。 教科書・教材は寄付によって賄われており、運営状況は厳しい。
軍事政権による恣意的な逮捕、殺害、暴力
◆クーデター以降ザガイン管区で7,000人以上の民間人が死亡、ミャンマー全土でザガイン管区が死者最多。
◆BBC Burmeseの記者の関係者は RFA に対し、報道機関のトップを含むすべての地元の BBC ジャーナリストは軍事政権の脅威のために身を隠していると語った。
◆マグウェ地方域Pauk郡区Taung Myint 村の CDM 教師 U Saw Tun Moe は、軍に斬首され、学校のドアに吊るされ、指輪と時計を奪われた。
◆ザガイン地域カンティー警察署に収容されていた政治囚14人が警備を破って逃走。うち5人が発見され再び拘束された。逃走中の政治囚をカンティー郡の作戦司令部が捜索中。
◆20日ヤンゴン地域・新ダゴン(東)郡区・第10地区の民家に警察と地区行政局が立ち入り、ロヒンギャ117人を拘束。 国民統一政府(NUG)人権担当省顧問によれば、ヤカイン州中部、北部からマレーシアに渡ろうとしていたロヒンギャ(男性78人、女性49人)で、どこに勾留されているかは現在調査中。
◆モンユワ大学学生同盟の著名なリーダーであり、モンユワのストライキ委員会のリーダーであるワイ モー ナイン (Wai Moe Naing) 氏は、先月すでに 10 年の懲役を言い渡されていたが、今日、さらに 4 年の懲役刑を言い渡された。彼は刑法第 505 条 (a) および自然災害管理法第 25 条に基づいて起訴され、14年という長期の懲役刑に直面しているが、軍事政権はまだ他の罪状を完了していない。
軍事政権による国民・財産への攻撃
◆16日マグェー地域タウンミン村に軍が侵入し占拠。周辺の村の住民を含む3千人が退避。 8月にも同村は軍による襲撃を受けており民家全約300棟中47棟が消失する被害を受けている。
◆10月14日~15日に国軍がザガイン管区で大規模掃討作戦を実行し、新たに2万人以上の避難民が発生。
◆ザガイン地域ウェッレッ郡内の5村を15日から16日にかけて軍が焼き討ちし、バダウッチョン村で民家5棟、ンガチンアイン村で民家5棟、スィンニン村で民家4棟が焼失した。住民は退避。 また、13日〜16日にかけて同地域バンマウッ郡コーター村に軍が重砲を撃ち込み、侵入。焼き討ちを行っているという。
◆ザガイン地域チャウンウー郡マティーター村とンガーロンティン村を軍が襲撃。民家計200棟が焼かれたほか、住民2人が銃殺された。 避難している住民の多くが家を失った状態。
◆18日ヤカイン州のロヒンギャの村、ブーディーダウン郡グータービン村落区タイェッタウン村を拠点とする軍部隊が重火器使用により45歳の住民男性が負傷。軍に連行された後、死亡したとアラカン軍(AA)報道官が発表。17日にもカンバウッ村のロヒンギャ女性が死亡。 10月だけでロヒンギャ4人が犠牲に。
◆10 月 19 日の朝、ラカイン州Rati Taung郡区Peingtaw 村の 7年生の生徒が重火器で射殺された。亡くなったのは14歳のMa Nin Nin Sanで、自宅の庭で軍の一方的な発砲で撃たれた。
◆マグェー地域パコック県パウッ郡南部の村に軍と軍製民兵ピューソーティーの合同部隊が侵入し、占拠したため、ティージャウッ村、レーラン村、ミェージャー村、ユワターエー村タプッスー村、タイェッレービン村等の住民計約6千人が村外に退避。
◆19日軍が、ザガイン地域インマービン郡インバウンタイン村、ピャーオー村周辺一帯をヘリコプター少なくとも4機で攻撃。兵員200人をヘリから降ろして人員を補充した後、空中から銃撃。これにより少なくとも5村の住民が避難。避難中の妊娠中の女性を含む住民3人が被弾し死亡。
◆カレン州内を走るアジアハイウェイのミャワディーコーカレイ区間で戦闘が激化していることから、タイ緬二国間の労働者雇用協力に関する覚書によりタイに渡ろうとしていた労働者約2千人が18日から立ち往生。漁業、農業、製造業等に従事する予定。 今年5月より約5万7千人の労働者がタイに渡航している。
◆19日チン州Hakha郡で、国軍のドローン爆撃により子ども2人が死亡した。
平和的抗議・CDM
◆ヤカイン州北部マウンドー郡を拠点とするNGOガユーナー・ネットワークの副代表ウー・フラ・テイン氏及びメンバー1人が自宅で拘束された。同郡内でのNGOの活動が軍により制限される中、同組織は保健、冠婚葬祭、献血等の慈善活動を続けていたが、メンバーの身の安全を守るため現在活動を停止している。
◆軍事評議会は、軍事評議会に反抗した 14 人の CDM 教授を含む 557 人の医師を解任し、医師免許を剥奪する秘密命令を発した。
武装抵抗・PDF・戦闘
◆18日午後1:25にヤンゴン市ヤンギン郡区中央警察署付近の側溝で爆発事件が発生。都市ゲリラ部隊(YUA)が実行したとの声明を発表。 同日午後12:54にヤンゴン市タケタ郡区内でも爆発事件が発生。 午後2:10にはボーダタウン郡区で爆発事件発生。
◆17日ザガイン地域ウェッレッ郡シュエパンゴン村の警察署を一般市民で構成されるPDFが攻撃したことにより戦闘が発生。これに対し軍側がヘリコプターで機銃掃射を行い、PDF戦闘員2人が死傷。PDFは警察署の攻略に失敗。軍による同村PDFへの空からの攻撃は今月2回目。
◆21日午前8時、東部カレン州コーカレイ市でカレン民族同盟(KNU)傘下のKNLA-PDFの合同部隊と軍との間で激しい戦闘が始まった。 KNU側は既にコーカレイ市内の政府機関を占拠。市内の軍第67歩兵大隊基地の攻略を狙うという。 これに対し軍は、重火器や複数の戦闘機で攻撃。市民2人が死亡、10人が負傷。
国際関係
◆市民側勢力を主導する諮問機関の国家統一諮問評議会(NUCC)は、中国共産党大会の開催に合わせて習近平国家主席宛に送った祝電の中で、ミャンマーの平和構築に向けて中国と手を携える意志があることを伝えた。
◆6日、SACとマレーシア政府との合意の下、ミャンマーに強制送還されたミャンマー国籍者150人の中に非暴力の抵抗運動CDMに参加し、マレーシアのUNHCRを通じて庇護申請を予定していた海軍将校6人が含まれていたことに関し、NUG及び人権団体が反軍活動家を本国に送還しないようマレーシア政府に求めた。
◆資金洗浄などを監視する国際組織FATF、資金洗浄対策が不十分だとしてミャンマーをブラックリストに載せた。