2023年4月2日から8日までの1週間にミャンマーで起きたことです。
▼5日、カレン民族解放軍(KNLA)とPDFの合同部隊が、中国が支援するオンラインギャンブル、詐欺、人身売買の中心地であるカレン州Shwe Kokkoの北約10kmで軍と国境警備隊(BGF)を攻撃し、5カ所の前哨基地を制圧した。
この激しい戦闘から逃れるために約5,000人(その多くが女性や子ども)が国境を越えてタイのターク県に渡り、地元住民が設置した仮設住宅に避難している。
カレン州コーカレイ市では、市内の軍評議会事務所所在地で軍第22旅団傘下の部隊とKNLA-PDFの合同部隊との間で激しい戦闘が継続し、軍は戦闘のない方角に向かって小重火器を放ち、少なくとも住民1人が死亡した。
この間、タイ入管にPDFのメンバー3人が拘束され、ミャンマー軍評議会側のBGFに引き渡された。仲間らがカレン同盟軍(KNU)やタイ国軍の協力のもと入管への交渉を試みたが、既に4日にミャンマー軍に引き渡され、関係者は生還の可能性は低いと見る。
軍への抵抗勢力が7日〜21日までの間アジアハイウェイのカレン州コーカレイ市-ミャワディ市を結ぶ区間の通行禁止命令を出したことを受け、ヤンゴン市-ミャワディ市間を運行する一部長距離バスが運行を見合わせている。
▼軍評議会は、抵抗勢力によって大きな損害を被っているザガイン地方域、チン州、カヤー州、シャン州、タニンダーリ地方域などの地域でも、村々への大規模な掃討作戦を展開し、各地で戦闘が続いている。軍側は民家の焼き討ち、重砲での攻撃を行い、戦闘機や軍用ヘリコプターでの空爆を繰り返し、住民の死傷、民家の焼失、多数の住民の村外への避難が生じている。5日のカチン州での空爆では、入院病棟の8割以上が破壊された病院を含め、学校や民家20棟以上が破壊された。
▼ザガイン地方域モンユワ郡区のザガイン裁判所はウェイモーナイン(Wai Moe Naing)に34年の懲役刑を言い渡した。彼は2021年のクーデターが発生したとき、いちはやくモンユワでの抗議活動を主導した。同年 4月、政権軍は彼が乗っていたオートバイに警察車両を衝突させ、彼を負傷させて逮捕した。
国内情勢
◆ラカイン州の各地で、10代の若者を中心に薬物使用が蔓延している。女性の常習者も急増。州都シットェー市内では、路上や公園等、人目につきやすい場所での使用は珍しい光景ではなくなったという。
◆3日、軍はシンガポール系のGrab社のタクシー以外のヤンゴン空港への乗り入れを禁じた。これまで空港に出入りしていたFlying Swallow 、シュエルンビャン、Royal Golden Brothers and Friends社等のタクシー500台が空港内に営業の場を失った。
◆軍事政権は、間もなくくる新年のティンジャン祭りに、レストランは 30万 チャット (143 米ドル) を、工場は 20万 から 50万 チャット (95 から 238 米ドル) を寄付するよう要求。
◆4日、CRPHが声明。「世界の諸国家と国内の政党は、法の支配とミャンマー国民の意思を尊重し、軍のいわゆる選挙を否定し、叛賊である軍のグループに協力しないよう強く求められている。」
◆5日、軍評議会が2023年度の予算額を公表。 軍傘下の全省庁の予算のうち国防費が最多で5兆6千億チャット。前年度から5割増えて1兆9千億チャット増。NLD政権下の2020年度は3兆4千億チャット。 NUGは、国民の血税で国民を殺していると軍を批判。
◆地元住民によると、マンダレー市当局は 4 月 1 日から 6 日にかけて、アウンサンスーチー通りで 200 本のホウオウボクの木を切り倒した。木々は、指導者が追放された NLD 党の色である赤い花を咲かせる。
◆軍への抵抗勢力が7日〜21日までの間アジアハイウェイのカレン州コーカレイ市-ミャワディ市を結ぶ区間の通行禁止命令を出したことを受け、ヤンゴン市-ミャワディ市間を運行する一部長距離バスが運行を見合わせている。 市街戦でKNLAと国民防衛隊の合同部隊が両市の軍評議会拠点を制圧している。
◆軍評議会は毎年ミャンマー映画協会の主催で開催されて来たミャンマーアカデミー賞の2019年からの3年分をまとめて5月に開催することを計画。映画監督や芸能人に出席するよう圧力をかけている。クーデター後に軍への抵抗を表明した芸能人が今回ノミネートに応じる場合、賞を授与した上で謝辞を述べさせる計画。
人道問題
◆カレン州ミャワディ郡新シュエコウッコー市付近で軍-国境警備軍BGF合同部隊とカレン民族解放軍KNLA合同部隊との間で5日に発生した戦闘により住民4千人が避難。 KNLAが軍拠点を制圧したことから始まった。カジノ施設等に戦闘が広がっている。避難民はメーソットに3千人、メラマに千人。困難な状況。
◆シャン州南部カヤー州境に位置するピンラウン郡サウンビャウン村付近で今年2月24日に軍とカレンニー民族防衛隊KNDF合同部隊との間で戦闘が発生して以来、戦闘が継続。軍は空爆を行っており、現在までに1万人を超える避難民が発生している。
◆南東部タニンダリー地域で戦災避難民が急増。今月月初の段階で2千人程度だったのに対し現在1万人に。戦闘が激化しているテインクン村落区の住民が最多。インフルエンザ等の流行により咳止めや経口補水液等の医薬品のニーズが拡大するもストックがない状態。
軍事政権による恣意的な逮捕、殺害、暴力
◆5日、ザガイン地方域モンユワ郡区のザガイン裁判所はウェイモーナイン(Wai Moe Naing)に34年の懲役刑を言い渡した。彼は2021年のクーデターが発生したとき、いちはやくモンユワでの抗議活動を主導した。同年 4月、政権軍は彼が乗っていたオートバイに警察車両を衝突させ、彼を負傷させて逮捕した。
◆5日、ミャンマーで人気ディスクジョッキーの Violetがミッチーナーからヤンゴン市に戻るとき、ミッチーナー空港で逮捕され、拘留されたと伝えられている。
◆マンダレーPatheingyi郡区NLD事務所に、軍と民間人が侵入し、破壊した。 彼らはNLDの党旗をひき降ろし、アウンサン将軍とアウンサンスーチーのポスターを破壊した。
◆カチンバプテスト連盟カラムサムスン前会長にカチン州ミッチーナー刑務所内の裁判所が7日、非合法組織接触法、刑法505条、テロ防止法違反の容疑で計6年の禁固刑を言い渡した。昨年12月4日に病気治療のためにタイに渡る途中、マンダレー空港で軍に拘束され、収監されていた。上訴の予定。
軍事政権による国民・財産への攻撃
◆2日、ザガイン地域パレー郡フノーカン村付近で兵員200人程度の軍部隊と国民との間での戦闘発生後、軍が村の焼き討ちを始めたことから、周辺6村の住民4千人余りが避難。フノーカン村では、数度に渡って軍による焼き討ちに遭っており、現在は住宅総数200軒中7軒しか残っていないという。
◆2日、ザガイン地域カンバルー郡ショーピューゴン村及びニャンイン村を軍第137歩兵大隊の兵士が襲撃し、焼き討ち。住民約5千人が村外に退避。被害の程度は不明。2村は、複数回軍による焼き討ちを受けている。
◆チン州マトゥピー国民自治組織の発表によれば3日、マトゥピー郡ワランデー村を軍部隊が襲撃。民家を焼いた。同じ軍隊が3/31にも同郡カラー村を焼き民家9棟が焼失。1日にも民家12棟が焼失。 3月からマトゥピー-パレッワ道路上で軍部隊とチン民族防衛隊間の戦闘が継続している。
◆5日、カチン州シュエクー郡スィーター村を軍が戦闘機で82mm爆弾を投下して攻撃。スィーター地域病院と学校及び民家20棟以上が破壊。病院は入院病棟の8割以上が破壊された。
◆チン州で80人以上の兵士が死亡するという大きな犠牲者に直面している軍事政権は、1週間で63戸の民間住宅を焼き払った。
◆カチン州シュエクー郡スィータウン村及びマンカー村で8日、軍が2度空爆を行い市民少なくとも3人が死亡、2人が負傷、4人が行方不明、4千人が避難。軍の一般市民への攻撃の根拠は、国民防衛隊PDF支援の嫌疑。 ザガイン地域ザガイン郡、バマウ郡でも同日、軍がヘリで村を攻撃。住民が負傷。民家が破壊。
平和的抗議・CDM
◆民主派教師15人逮捕 国軍に抵抗、独自に学校開設――軍事政権は、3月22日に責任者の女性教師を逮捕し、その後、別の女性12人と男性2人を逮捕。
武装抵抗・PDF・戦闘
◆2日午前3時半頃、エーヤーワディー地域ワーケーマ市内のミャンマー農業銀行で爆発が起こり、建物の一部が損壊。1人が怪我をした。市民による抵抗戦「ナンタイッアウン作戦」の一環として、2つの市民防衛組織が合同で実行したもの。
◆軍は軍評議会が拠点を置くネーピードーと隣接するカヤー州に大隊計10個を送り込み、大規模攻撃を展開。 軍側は、カレンニー軍及び国民防衛隊の合同部隊の抵抗により、武器等の陸上輸送ルートを断たれたため、四断作戦や空爆を駆使して奪還を試みているが、州都ロイコー以外の地域は制圧できていない。
◆ザガイン地域ウェッレッ郡サインナインレー村近くの僧院で軍364軽歩兵大隊及び第33師団により拘束されていたインドー村の住民5人を救出しようとしたG.Z特別部隊を含む地元防衛組織のメンバー7人が4日、銃撃戦の末、軍に拘束され射殺された。 住民5人は脱出に成功した。
◆5日、民族武装勢力がミャンマー南部のカレン州で軍の国境警備拠点を攻撃、激しい戦闘が発生し、約5,000人が国境を越えてタイのターク県に逃れ、地元住民が設置した仮設住宅に避難。その多くが女性や子どもみられる。5日と6日に、中国が支援するオンラインギャンブル、詐欺、人身売買の中心地であるカレン州Shwe Kokkoの北約10kmで、Lion大隊および他の抵抗勢力が軍と国境警備隊(BGF)を攻撃し、5カ所の前哨基地を占領。
◆6日午後9時15分頃、ヤンゴン市ミンガラードンの方角から爆撃砲5発を発砲する音に続き、機関銃の銃声約50発が聞こえた。雷鳴のような爆音で、北ダゴン、北オウカラパ郡区からも聞こえたという。住民らは、音の発信源はミンガラードン空軍基地ではないかと推測する。行為者は市民防衛組織の可能性あり。
◆カレン州コーカレイ市内の軍評議会事務所所在地で軍第22旅団傘下の部隊とカレン民族解放軍KNLAと市民防衛隊の合同部隊との間で激しい戦闘が継続。軍は戦闘のない方角に向かって小重火器を放っており、少なくとも住民1人が死亡した。
◆ヤンゴン市を拠点とする市民抵抗勢力の地下組織Dark Shadow(YGN UG)の責任者によれば、同組織は8日午後6:50頃、ヤンゴン地域政府庁舎前に設置された新年行事の水かけ祭りの中央仮設ステージ2つをリモート時限爆弾で爆破。軍が4/13〜開催を予定する水かけ祭りへの抵抗と賛同する市民への警告が目的。
国際関係
◆インド・マニプール州政府が難民カード(Refugee Card)の発行に向けてミャンマー人難民の実態調査を開始。州政府によれば、難民カード発給後、難民に対する食料及び保健医療支援を行うという。
◆タイ入管に国民防衛隊Lion Battalionのメンバー3人が拘束され、軍評議会側の国境警備隊BGFに引き渡された。仲間らがカレン同盟軍KNUやタイ国軍の協力のもと入管への交渉を試みたが既に4日に緬軍に渡っていた。逃亡を試みたメンバーが銃撃を受けたとの目撃情報あり。関係者は生還の可能性は低いと見る。