最近の動き(2022年10月12日)

2022年9月7日、「自衛のための戦争」 宣言1周年に当たって、国民統一政府(NUG)のドゥワラシーラ大統領代行が、「ファシストテロリスト軍事評議会は、もはや国の領土の半分を支配していない」と演説しました。
ミャンマーの情勢は、2023年に総選挙を実施して統治の正当性を誇示しようとする軍事政権と、この1年間で軍事独裁政権を打倒する計画を作成したというNUG政府との戦いが見えてきたようです。この動きを、私なりにまとめてみました。

日本政府の対応に動き

日本政府の対ミャンマー政策に、最近、相矛盾する2つの動きがありました。

日本の防衛省は、ミャンマー国軍軍人の研修新規受け入れ停止を発表しました。これは、在日ミャンマー人を含むミャンマー人、心ある日本人、あるいは諸外国からの高まる抗議を受け入れたものだと思います。

他方、安倍元首相の国葬議に軍事政権を招待し、軍事政権代表を参列させました。これに対して、在日ミャンマー人や人権団体が、軍事政権にお墨付きを与えたと非難しています。また、日本政府は、軍事政権を裨益するODA既存事業を継続しています。

日本政府がミャンマーの軍事政権への加担行為をやめ、一刻も早く国民統一政府と関係をもち、軍事政権による国民への武力行使や残虐行為を止めるための具体的行動をとるよう求めます。

きょう10月12日、ミャンマーの民主化を支援する超党派の議員連盟が、ASEANの国会議員でつくる議員連盟と共同で、ミャンマー軍に、武力や暴力の行使を即刻やめさせるための具体的な行動や、現地への人道支援の拡大などを日本政府に要請しました。このような動きが広がり、実行されることを期待します。

自らの統治の正当性を誇示したいミンアウンフライン

国軍最高司令官のミンアウンフラインは、《国難にあたり、軍出身の副大統領が(大統領が軍に拘束され「機能停止」になったので)大統領代行として非常事態宣言を発令し、司法・立法・行政の権限を大統領から国軍最高司令官に委譲した》ことによって国家行政評議会議長となり、現在は暫定首相として権力の座にいる、という建前をとっています。すべては2008年憲法にもとづいた合法的なもので、クーデターではないと主張しています。

権力掌握正当化の根拠としている非常事態宣言の期間を、クーデターから1年経過した2022年2月に半年間、さらに8月に半年間延長しました。2008年憲法では非常事態宣言の当初の期間を1年とし、半年間ずつ2回まで延長できると定めており、期間終了後は半年以内に総選挙を実施しなければなりません。つまり、憲法上、2回目の延長期間が終了する2023年1月31日から半年以内に総選挙を実施する必要があります。憲法に則った合法的な政権であると主張している以上、(建前としては) 総選挙を実施して勝利し、政権が安定していることを内外に誇示することが、ミンアウンフラインにとって、現在の最大課題であると言えます。

こうして、2023年に総選挙を実施するための準備がはじまっています。
ミンアウンフラインが一部の少数民族武装勢力と会談を行ったり、国軍の政党であるUSDP(連邦団結発展党)が新総裁を選出したりするなどの動きが見られます。

2023年に民主化革命を成功させる計画を策定したNUG

NUGは軍事政権が計画している総選挙の実施を認めず、10月7日の記者会見で、軍事独裁政権を打倒するための最後の戦いとして1年間の期間を設定し、あらゆる面から攻撃を開始する、と正式に発表しました。
1988年のミャンマー民主化闘争(「8888闘争」と呼ばれる)の学生運動リーダーで、その後通算20年間の獄中生活を送り、一貫して民主化のために戦っているミンコーナイン氏が、このNUGの発表についてフェイスブックに投稿しています (「革命は総力を挙げての攻勢になってきた (ミンコーナイン)」)。

 

ミャンマー国軍は、1990年の総選挙でNLD (国民民主連盟) に敗北したにもかかわらず政権移譲を拒否して20年間総選挙を行わなかった過去があり、どこまで権力正当化の建前を貫くのかは分かりませんし、NUGが最後の戦いだとする1年間が実際にどう展開するのかは見通せないとはいえ、この1年間は、ミャンマーの未来にとって大事な年になるのは間違いないでしょう。
現在、ラカイン、マグウェ、チン、ザガイン、カチン、カレン、カヤーの地域が軍と民主派の戦闘地域となっており、ビルマ平原内でも、PDFによるゲリラ戦が行われています。
大都市部は賑わいを取り戻したという報道もありますが、爆破事件が頻発するヤンゴン市内では国軍兵士による厳重な警備が行われており、飲食店が通常営業に戻って人通りが増えているストリートがあるものの、多くの店舗が閉じているストリートもあるようです (MYANMAR JAPON (ミャンマージャポン) HOME > 特集記事 > ヤンゴンは今どうなっているのか ヤンゴン定点観測アーカイブ(2022年9月))。表面は落ち着いたように見えても、どれだけ厳重に警戒していても、クーデター政権に反対するフラッシュ的な抗議活動がつづいています。10月9日の「ダディンジュ満月祭り」に、ヤンゴン中心部に屹立するシュエダゴン・パゴダでクーデターへの抗議行動が行われました (https://twitter.com/JFormyanmar/status/1579305027256012800?s=20&t=ytWL_M1DCv_UgQnET3tvuQ)。

ミャンマー国民は生命の危機にさらされている

軍事クーデターはミャンマー国民の命を危機にさらしています。国連世界食糧計画はミャンマーで 1,320万人が飢餓の危機に直面していると発表し、OCHA(国連人道問題調整事務所)は、クーデター後に難民が100万人増加したと発表しています。

クーデター後の経済不況の中で、ますます多くの女性がセックスワークに転向し、そこで収入を得ようと奮闘し、犯罪集団による暴行や恐喝に直面している現状も報告されています (MOE TAW DAR SWE, “Yangon sex workers risk violence to feed their families,” FrontierMyanmar, OCTOBER 4, 2022)。  

9月16日、ミャンマー北部のザガイン地方域で軍事政権の軍隊はヘリコプターで学校を標的に攻撃し、子どもたちを殺害しました。この非人道的な行為は、ローマ教皇がミサで触れ、国連のミャンマー独立調査機構は戦争犯罪の可能性があると非難しました。

軍事政権は、CDMや国民防衛隊 (PDF) の支持者を追跡し、支援金の流れを止めるためにデジタル金融サービスへの監視をいっそう強化しています。さらに、「Facebook上でNUG、連邦議会代表委員会 (CRPH)、PDFまたは支援者による文章、画像、映像等の投稿に、いいねボタンを押したりシェアしたりする行為は刑法第124条b項違反 (軍による国家の安定維持の妨害) にあたる」とし、1チャット、1ピャーを寄付しても死刑とすることが可能だと国民を脅迫しました。

CDM医療従事者の戦い

クーデターが発生してから、国内の11万人の保健医療従事者のうち6万人を超える医療従事者がCDMに参加しました。軍事政権は彼らに対し、職場復帰を誘い、あるいは脅迫、攻撃を加えています。

それにもかかわらず、抵抗はやみません。NUG 保健大臣のZaw Wai Soe博士によると、現在、320人以上の専門医を含む5,000人近くが NUG に参加し、他にも多くのボランティアが活躍しています (“မြန်မာ့နွေဦး တော်လှန်ရေးထဲက အသက်ကယ် လက်များ (ミャンマーの春の革命を救う手),” Irrawaddy, October 2022)。

春の革命が始まって以来、NUG は医療従事者として最前線に加わる 1万人以上の人々に医療訓練を提供し、最前線の戦場に同行し、負傷者の応急処置を行ってきました。NUGには、手術を行うことができる 51の病院、250を超える診療所、および一次医療を提供できるグループがあります。

今後、戦闘が激化する可能性があるため、NUGの国防省、財務投資省や民族武装勢力など様々な部署は準備を進めており、保健省も医薬品を集め、必要な医者・看護師を募集し、医療関係者向けのトレーニングを準備しています。

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