現地CDM参加者とのミーティング

ミャンマーの大学CDMを支える会では2021年11月、ミャンマー現地のCDM参加者・サポーターの方々と、オンライン・ミーティングを行いました。
彼らは、困難で苦しい状況のなか、クーデターに反対し、民主主義を取り戻すためにもっとできることはないかと模索しつつ、軍事独裁を倒したあとのことをも見据えて活動していました。

ミャンマーの軍事独裁政権はいま、国民統一政府(NUG)を支持している少数民族支配地域へ「焼き尽くし、略奪し尽くし、殺し尽くす」徹底的な軍事攻撃を行い (「ミャンマー国軍による、新たな「人道に対する犯罪」」など)、都市部では、平和的な抗議デモへ車で突っ込み参加者を殺害するといった「見せしめ」(「ヤンゴンでのクーデター抗議デモに対して行われた “最大の攻撃”」) で国民の抵抗を委縮させようとしています。

他方、12月10日、軍の脅迫にもかかわらず全土で「サイレントストライキ」が行われ、軍事独裁政権に反対する国民の意思を「無言」で示しました (「ミャンマーのサイレントストライキ (#SilentStrike)」)。クーデターを起こしたミャンマー国軍は、クーデターから10カ月たってもなお、国民を掌握できていないことが世界に示されました。20万人が立ち上がったCDMは、その威力を蓄えつづけていると感じました。

以下、ミーティングの内容を紹介します。
日本ではほとんど報道されたことのないCDM参加者の生活、活動、思い、それにCDMが立ち上がった経緯、NUGとの関係など、現地のリアルな状況です。
なお、ミーティングに参加された現地の方々および現地組織の安全のため、彼らを危険にさらすような情報を削除して公開いたします。

現地の状況

CDM者(CDMer)は収入がないため、苦労しています。 そのうえ軍事評議会*)は、脅迫し、逮捕し、家族を人質にしたり、働けないようにしたり、多くの悪いことをして圧力をかけています。生計を立てるために建設の仕事をして、働いているときに事故で亡くなったCDMerもいます。

*) クーデターの翌日 (2月2日)、ミャンマー国軍が設置した、ミンアウンフライン最高司令官を議長とし、軍幹部ら11人で構成する「連邦行政評議会」。閣僚の人事権も握っており、軍事政権における行政の最高機関である。နိုင်ငံတော်စီမံအုပ်ချုပ်ရေးကောင်စီは、国家行政評議会、行政評議会、国家統治評議会とも訳されている。

こんな困難にもかかわらず、CDMの忍耐力は驚くほどまだ強いです。当初は、国民みんなが協力したらクーデターは2、3か月しかかからないと予想されていましたが、現在、10か月が経ちました。それでも CDMはまだ強力です。

大学ひとつをとってもCDM 参加率は5割~7割ぐらい、大学学長が軍隊側の場合だけ少し少ないです。少ないと言ってでも3割ぐらいあるから、軍事評議会側は国の機関をまだ運営できていません。

10か月の間、軍事独裁者の残虐行為がつづき、そしてコロナの影響で大変でした。

CDMに参加しつつ行っている活動

ミャンマーでは、教師だけでなく学生もCDMを行っています。

CDMの教師たちは、先ほど述べたような諸困難を我慢する一方で、ある教師はNUGによって形成された文部省で、協力して働いてます。CDMの期間が長くなってきて学生たちの教育が打ち切られることを心配し、オンラインコースを実施するために努力しています。一部のCDM教師はこれを支援しています。

現在、大学は評議会あるいは暫定評議会を結成し、小学校・中学校・高等学校は暫定教育委員会を結成して、協力して行動しています。大学評議会と教育委員会は、主に自分の地域にある教員・職員の生活に必要なさまざまなこと、学生たちの教育のためにどうするか、どうしたらいいのかを考えて、NUGのサポートも受けながら行動しています。

問題は学校によって異なります。NON-CDM及び学長・校長先生と軍事評議会の間の協力の程度に応じて、直面する困難は違います。CDMの情報、データを得るにはNON-CDMの支援が必要です。

いま感じているのは、NON-CDMたちには、良い面が見えないことです。親しかった同僚が軍隊側になり、私のことをあれこれ知っていて軍事評議会にその情報を流すので、非常に困難な状況においちっています。正直怒ります。もし、国民側が勝利してNON-CDMたちに罰を与える時、日本側に理解していただきたいです。彼らのハラスメントはひどかったです。

逮捕や殺害の危険にさらされているCDM参加者

CDM参加者の困難は、まずは収入がないことです。多くの人がCDMをサポートすると言ってますけど、別の仕事をするために就活しても、採用してくれません。これは悪い状況ではありません。まだ大丈夫です。

より困難なことは、ある職場では、家にも安心して住めない。いつ逮捕されるのかも分からない。学校からの脅威やプレッシャー、仕事に戻らないとどうなるとか、いろいろ脅かされています。

私の知り合いの先生の場合、CDMをしただけで、自分の村に住んでいたのに周りから通報され、警察が逮捕に来たから何も持たず必死に逃げました。これはNUGとつながってない、ただの [自発的な] CDMです。

デモ活動に参加して逮捕される人もいます。ある先生は、デモに参加して殺害されました。CDMサポートをしていることが分かって、逮捕されて尋問中に殺害されたケースもあります。

先生の1人は、CDMを提供 [CDMに参加したうえ、CDM参加の人たちをサポートすること] したために3か月間投獄されました。逮捕されただけではなく、刑務所に投獄されたのです。その時は、コロナもひどかったころです。その人はとても運が良く、死なないで釈放されました。

デモ活動をして拘束されたら、CDM参加者は、起訴されるのも、尋問されるのも、普通の人とは違います。

CDMなら家に全然住めないです。私たちはCDMだけではなく、NUGをもサポートしています。ある日、警察が私たちを探していることを友人から聞いて、私たちはすぐ逃げました。

ある人のお姉さんはお医者さんでCDMに参加しているから、その人を探しに来て見つからない場合、お姉さんも危険なので、家族全員で逃げ出しました。そして、お姉さんは刑法第505条に基づいて起訴されたため、親も逃げることになりました。仕事も全部捨てて逃げています。誰も何もできない状況です。

CDMはどのように立ち上がったのか

2月1日のクーデターの夕方、SNSにいくつかの投稿が出てきました。誰が初めて投稿したかはわかりません。「このようなクーデターに非暴力的に反対するために、一番いい方法は国民不服従運動CDM」とのポストです。ある例(マハトマ・ガンジー)とも比べて見せました。

ほかの人たちがどう思うかは分からなかったのですが、私は賛成して、CDMをするべきだと思い、周りの人々に相談しました。

2月2日のお昼に会議をして、クーデターは受けいれられないことを話し、CDMに関して感想を聞いて、相談し合いました。ほとんどの方々がCDMに賛成してくれました。

2月3日、ネットがシャットダウンされた朝から、みな仕事に行かなかったのです。誰が指示したかとの質問には、答えはないです。1988年の革命のときにリーダーだったミンコナインさん、その他のミャンマーの有名な方々もCDMの件をフェイスブックに投稿しました。みな、自分で考えて、やるべきだと思って参加したのです。

CDMに参加して考えること

正直言うと私としては、[CDMは] するべきものでした。私がこれをした、できたと思いません。これ以上何ができるか、早く [クーデターを] 終わらせるために何をしたらいいかと考えていて、満足してないです。

PDF**)に参加している青春 [若者] たちを見ると、子供たちでさえ頑張っています。私ができるのは、これだけです。子供たちのために、他に何ができるのかを考えています。そして、私がしていることは本当に効果的であるのか、子供たちのために何もできないと感じることもあります。

**) 「国民防衛隊」「人民防衛隊」「国民防衛軍」とも訳されています。会ホームページの「【説明】PDF(People Defence Force;国民防衛隊)」「人民防衛隊(PDF)は、どのような活動をしているか?」をご覧ください。

現時点では、CDMに参加しているからと言って、嬉しく思えません。軍隊側の人がおぞましいし、嫌いです。一方では、学生さんと職員たちのことが心配です。

国民側が勝った時にも、すぐには幸せにならないと思います。

状況はどうなるか? PDFに入っている子供たちみんなが無事であるのか、結果はどうなるのか。将来のことを考えて、心配しています。

国民統一政府 (NUG) とCDM

CDMが始まった時は、NUG***)はまだ存在していません。

***) NUGについては、会ホームページの「【説明】NUG(National Unity Government of Myanmar;国民統一政府)」をご覧ください。

現在NUGは 「春の宝くじ」****)と提携して、CDMをサポートしています。CDM参加者は全国で20万人いるため、サポートはまだ不足しています。CDM参加者だけでなく、CDM中に亡くなった人々も、拘束された人、コロナの影響をひどく受けた人、尋問中または、軍隊の残虐で亡くなった教師の家族もサポートが必要です。

****) 会ホームページの「「春の宝くじ」と「5百万ドル抽選券」 をご覧ください。

NUGがどのようにCDMを支援しているということより、CDMがサポートしないとNUGは続けられません。省には副大臣だけいます。学生たちのオンラインコースだったり、難民の教育だったり、医療機関等に関しても、CDMがサポートしないとダメです。NUGは海外から人道的資金を求めたりして、お互いに協力して頑張っているのです。

生活費について

一番高い月給は校長先生で370,000チャット(25,000円)、最低の職員の月給だと140,000チャット(9,500円)くらいです。
生活費がいくらで足りるのかという質問については、答えは難しいです。健康に問題がなければ、100,000チャットあれば大丈夫と思います。もともと給料は生活費に足りませんでした。現在は物価も上がってるので、100,000チャット(6,800円)ぐらい支援できたら一番いいと思います。

日本から支援してほしいこと

日本政府にNUGを認めていただきたいです。

そして、最近NUGは国債*****)を販売しており、外国人も購入できるとのことです。国債を購入して支援いただけたらと思います。

*****) NUG発行の国債については、会ホームページの「国民統一政府(NUG)の国債」をご覧ください。

「スーチーさん」と呼ぶことについて

日本の方に、「スーチー」さんと呼ぶのではなく、「アウンサンスーチー」さんと呼んでいただききたいです。

その理由は、軍隊側がいつも「スーチー」さんと呼んでいるからです。

「アウンサン」はスーチーさんのお父さんの名前で、これを外して呼ぶのは、スーチーさんも好きではないです。しかも、軍隊はわざと外してそう呼ぶからお願いするのです。

ミャンマー語の発音は難しいですが、よろしくお願いいたします。

CDM参加者の生活については、会のホームページで「CDMer (市民的不服従運動参加者) の生活と想い」を紹介しました。彼らがいま置かれている厳しい状況と、そのなかで想っていることについて、あわせてお読みいただけるとありがたいです。

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現地CDM参加者とのミーティング

現地CDM参加者とのミーティング」への2件のフィードバック

  1. ミャンマーの現状に憂慮を抱きつつ強い関心を持っております。ご活動のご様子を読ませていただきます。発信ありがとうございます。

  2. 片岡様
    現地とのミーティングをお読みいただき、ありがとうございます。
    現在のミャンマーについて日本では、戦闘やゲリラ活動、難民に関する報道は不十分ではありますが流されていますが、「見せ場」が乏しい、地道なCDM活動にかんしては、あまり報道されていません。
    国軍が強大な軍事力をもってしてもミャンマーを統治できていない状況にあることには、政府部門や医療・鉄道・教育部門でCDMに立ち上がった労働者20万人が存在していることが大いに威力を発揮していると思います。ミーティングで明らかにされたように、CDMがなければNUGはなく、NUGはCDMを支えようとしています。
    しかし彼らは、国軍の弾圧の対象とされ、収入が途絶え、苦しい生活状況に置かれつつ、クーデターに反対する意思を貫いています。
    私は人道的立場から、こうしたCDMerの生活を支援していこうと思っています。
    一人でも多くの方にこうしたミャンマーの現状を知っていただき、少しでも彼らを支援していただく方が増えてほしいと願っています。
    どうぞ、よろしくお願いいたします。

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