2023年8月6日から8月12日までの1週間にミャンマーで起きたことです。
▼8888革命35周年を記念する大衆運動が、ザガイン、マグウェ地方域など各地で行われ、ヤンゴンでは軍事政権が警備を強化するなか、中心部に「8」を大書した雨傘をさす4人の姿が拡散された。
▼8888革命35周年の8日、NUCCがNUG共同声明を発表、NLDはバーチャルの記念式典を開催した。
▼8日に予定されていたアウンサンスーチー国家最高顧問の特別控訴審の審理が延期された。
▼NLDは、4回目の非常事態宣言延長に賛成した、NLD政権下で副大統領を務めたヘンリー・バンティオ元軍少佐を除名。
▼カチン殉教者の日の10日、KIO/KIA幹部らは、軍がNCAに違反したため停戦合意は無効であり、政権の終焉が近づいていると発言。
▼アウンサンスーチー氏の動静をめぐり、先月のタイ外相との会談以来いくつかのニュースが拡散したが、情報筋によるとそれらは軍の意図的な情報撹乱であって、氏は会談で沈黙を保ち、ネピドー刑務所にいる。
▼東ティモール首相が、ミャンマー問題が解決しなければASEANには加盟しないと発言。
▼米国、武器やジェット燃料調達に貢献してきたミャンマーの銀行2行(6月21日に制裁決定)との取引を5日までに停止するよう発表。シンガポール大手銀行UOBがミャンマーの銀行に、ミャンマー送金の中継を9月1日に停止すると通告。
▼NUG傘下組織による犯罪行為:マグウェ地方域の人民治安部隊隊員に属する刑務所職員8名が、PSF管理の刑務所に窃盗罪で収監されていた女性を、少なくとも24回強姦した疑いで逮捕された。
▼NUGは多くの支持を得ているが、内部改革や内閣改造を望む声もある。しかし、制度的な問題によって改革は難しい。
▼ILO、ミャンマーの労働者は深刻な状況にあると指摘。
▼カレン州では豪雨がつづいて各地で川の水位があがり、水害が発生し、多数が避難しているが、救援が届かない。
▼マレーシアを目指して50人以上のロヒンギャが乗った小型船が沈没し、23人の遺体発見、さらに30人が行方不明。
▼豪雨によってロヒンギャ難民キャンプを含むバングラデシュ南東部がほぼ水没し、土砂崩れが起きて死傷者が出ている。
▼ザガイン、マンダレー、タニンダーリ、バゴー地方域から、軍事政権軍およびピューソーティーによる村への襲撃、空爆、村民殺害が報告され、多数の村民が山や森での避難生活を強いられている。チン州でも空爆で7人が負傷、バプティスト教会などが破壊された。国連人権理事会「ミャンマーに関する独立調査メカニズム」(IIMM)が、ミャンマー国軍の戦争犯罪は、「より頻繁で大胆に」なっているとの報告書を発表。
国内情勢
◆最近チン州南部のパレッワ、ミンダッ、カンペレッ、マトゥーピー郡へのアラカン軍AAの侵入が顕著に増加。地元防衛隊は、州内への入域は認めつつも村内での宿泊や基地の開設はしないよう申し入れを行っているという。地元住民はミャンマー軍とAAの両方に怯えて暮らすような状況に陥ることを恐れている。
◆マグウェ地方域Saw郡区にあるNUGの人民治安部隊(PSF)隊員8名が、同郡のPSFが管理する刑務所に窃盗罪で収監されていた女性を、少なくとも24回強姦した疑いで逮捕された。刑務所の看守だった8人の男らは4月最終週から女性への強姦を開始し、6月に入っても引き続き強姦した。
◆軍事評議会はヤンゴンで、軍事独裁政権に反対する8888革命35周年を記念する大衆運動を弾圧するため、警備を強化した。
◆軍事政権の最高裁判所は、8月8日に予定されていたアウンサンスーチー国家最高顧問の特別控訴審の審理を延期した。
◆春の革命で共闘する革命諸組織共通の立場に関するNUCCおよびNUGの共同声明。
◆8日、アウンサンスーチーの党、追放された国民民主連盟(NLD)は8888蜂起35周年を記念するバーチャル式典を開催した。当時からの古参党員とNUG当局者が参加した。
◆NLD政権下で副大統領を務めたヘンリー・バンティオ元軍少佐が、7月31日に開かれた国防治安評議会に出席し非常事態宣言の6ヶ月延長に賛同した。これについてNLDは民意に背いたとして同氏の除名を発表。クーデター発生後も同氏は拘束されなかった。クーデター後に開かれた3回の国防治安評議会には健康状態を理由に欠席。
◆9日、ミャンマー軍事政権トップが、新内閣の初会議で「法と秩序」を繰り返し要求した。
◆国民統一政府はいくつかの目覚ましい成果を上げており、ミャンマーでは引き続き幅広い支持を得ている一方、多くの人は内部改革や内閣改造を望んでいる。しかし、制度的な行き詰まりによりその可能性は低い。複数の活動家は、Dr.Zaw Wai Soeが教育大臣と保健大臣の両方を務めており、頻繁に軍事問題について公に話すという事実を批判し、同博士は医療に専念し続けるべきで、他の誰かが教育省を率いるべきだと主張した。問題は、変更を加える主な責任が誰にあるのかは分からないことだ。
◆ソオタードームー・カレン民族同盟KNU書記長は、第17回総会開催から100日目を機に10日に開かれた記者会見で、「2015年に全土停戦合意NCAに署名をしたが、NCAの心臓部にあたる第1章に軍が違反したため合意は無効だ」と述べ、「軍は世界と国民を欺くためにNCAを利用したが我々とは無関係だ」と明言した。
◆10日、(1975年創設者Lahtaw Zau Sengらが殺害された)カチン殉教者の日記念式典でKIO/KIAのN’ban La委員長は、軍はすでに困難な状況にあり、この結果、軍は非武装の民間人に対する武力行使を決定し、女性と子供を拷問し、露骨に戦争犯罪を犯した。これらは軍崩壊の兆候であり、政権の終焉が近づいていると語った
◆情報筋によると、7月9日に軍はアウンサンスーチー氏とタイ外相との会談を許可し、PDFとNUGは国民から支持されていないことを伝えようとしたが、氏は沈黙を保った。もし氏がPDFとNUGを支持しないと言ったら、軍は即座に氏を自宅軟禁に変更しただろう。彼女はネピドー刑務所にいる。軍は意図的にフェイクニュースを流している。
経済ビジネス
◆米国務省8月4日報道発表「制裁対象のビルマ銀行との取引は2023年8月5日までに終了する必要がある」 6月21日に米国は軍事政権管理銀行のうち、ミャンマー貿易銀行(MFTB)とミャンマー投資商業銀行(MICB)の2行の制裁を指定。 両行は海外で武器やジェット燃料調達に貢献してきた。
◆現在の食料不安の状況は、2022年の農業生産量の減少、紛争の激化、食料価格の記録的高さ、サイクロン・モカの壊滅的な影響により、危機的となっている。
◆シンガポール大手銀行UOB、ミャンマー送金の中継停止へ。ミャンマー将軍御用達のオフショア銀行として知られるシンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)が、ミャンマーの銀行に対し、9月1日までに関係を断つと通告したと日経アジアが9日に報じた。
◆物価高騰がつづくミャンマー。ヤンゴンで開かれた地元向けの物産展で、「公正価格」(市場価格のおよそ半値)で販売する食用油を買うために長蛇の列。
◆11日付け国際労働機関ILOの発表によれば、クーデター発生後の解雇は23.5%、離職率は22%に増加。解雇された労働者のうち補償金がもらえたのは29.5%。男性や勤続期間の長い労働者と比べ、女性及び15歳〜24歳までの労働者は補償金が支給されたケースが少ない。ミャンマーの労働者は深刻な状況にあるとILOは指摘。
◆今回、軍が金を巻き上げる対象は経営者だ。 軍事政権は、領収書に印紙を貼っていない企業の情報を提供した者に報奨金を提供すると発表した。レストラン、ホテル等に関する情報提供者には罰金の30%、携帯電話販売者に対する情報提供者には罰金の20%の報奨金を提供する。
人道問題
◆カレン州ミャワディ郡等タイ国境周辺地域の住民が豪雨による水害に見舞われている。河川の水位が上がり、市内が冠水。アジアハイウェイが一部没落。この影響で住民約6千人が避難。影響を受けた地域社会には何の援助も提供されておらず、住民は自分たちで高台に避難している。 政権気象局は、ミャワディ郡区で (タイとの国境を流れる) Moei川の水位が臨界値を超えたと発表した。
また、カレン州Hpa-An郡区では、雨の影響でサルウィン川の水位が限界を超えた。 4つの区の1万人以上が自宅から避難し、救援所に避難している。
◆マレーシア目指したロヒンギャの乗った小型船が沈没、23人の遺体発見、さらに30人が行方不明になっている。一方で、8人が救助されたという。生存者によると、船には約50人以上が乗っており、マレーシアを目指していた。しかし、6日に沈没し、船員に見捨てられたという。
地元ボランティアによると、7日から9日にかけて、ロヒンギャ難民17人の遺体(女性10人・男性7人)がラカイン州シットウェ郡区のBasara村とThae Chaung村近くの海岸で発見された。彼らの乗った船は6日の夜、荒れた海で転覆した。
◆先週の壊滅的な豪雨により、主要都市やロヒンギャ難民キャンプを含むバングラデシュ南東部がほぼ水没した。キャンプでは土砂崩れが発生し、7日は母子も含む5人のロヒンギャが死亡、亡くなった人の数は日に日に増加しているようだ。
◆10日、AAPPの発表では、クーデター以後、軍事政権によって殺害された死者3,912人。逮捕された人2万4,244人、拘束されている人1万9,738人。毎日毎日、軍事政権によって奪われた命が増えている。このままでは、あと数日で4,000人を超えてしまいそうだ。
◆11日午前2:15頃、ザガイン地域ザガイン郡タライン村カナウー僧院に避難していた戦災避難民を軍が戦闘機で空爆。幼児を含む住民3人が死亡。多数が負傷。戦闘は起きていなかった。空爆後、陸路及び水路で到来した軍戦闘部隊が村を占拠。陸水空の3方向からの侵攻が行われた形。
◆7月29日から、軍戦闘部隊がマンダレー地域ダベイッチン郡ダガウン地区への侵攻を開始。郡内の村の住宅100棟以上が焼かれ、住民が殺害されている。これにより住民1万人超が山や森に逃げ込んで小さな集団に分かれて避難生活を送っている。豪雨で大型車両も近づけない地域であるため医薬品や食料が不足している。
◆ロシア支援の軍事政権、クーデター以後、壊滅的な放火攻撃で7万5000戸の民間住宅を破壊。軍事クーデターに反対する住民への組織的な焦土作戦だ。(映像有り)
軍事政権による国民・財産への攻撃
◆8日午前8時、ザガイン地域ブタリン郡タンダン村を兵員80人で編成される軍戦闘部隊が襲撃。同村を含む4村の住民数千人が村を脱出して避難。前日に国民防衛隊がブタリン市の消防署内の軍拠点を襲撃していた。
◆Dawei Information Centerによれば、タニンダリー地域イェービュー郡を8日午前7時頃、軍戦闘部隊が侵攻。テインジー村の住民4人およびキノコ採りをしていたムードゥー村の住民1人を人質にとった。さらに同部隊は3手に分かれて郡内の捜索を続けており、郡内8村の住民が村を離れて避難している。
◆8日の午前中と夜間の2度に分けて、バゴー地域ピュー郡アウッチャーイン村を軍が襲撃。住宅を焼き、国民防衛隊PDFのメンバーとの嫌疑で住民7人を射殺した。同日午前4:50に軍とPDFとの間で衝突が起きた後、村への襲撃が始まった。電話やインターネット等の通信は全て遮断されているという。
12日、アウッチャーイン村を軍が焼き討ち。住宅30棟が焼失。
◆9日、ザガイン地域キンウー郡ユワタン村に、軍部隊と軍製民兵組織ピューソーティー計100人程度が重消火器を発砲しながら侵入。住宅2棟を焼いた後、ポウッコン村に移動した。 また、同地域ディペーイン市内クエッティッ地区に侵入した軍部隊が同日、住宅を放火。詳しい被害状況は明らかになっていない。
◆12日午前11時頃、軍事政権の戦闘機がチン州のHakhaとFalamの間に位置するRamthlo村を爆撃した。空爆により少なくとも民間人7人が負傷し、Ramthloバプテスト教会の建物を含む数軒の家が破壊された。
平和的抗議・CDM
◆8日、ザガイン地域キンウー郡で農民が8888民主化運動35周年を記念して農作業の合間に示威行動を行った。バナーには、「未来の新しい連邦制へと前進しよう」と書かれている。
◆8日、ヤンゴンの中心部では、8888蜂起35周年を記念して「革命の炎は今も燃え続けている」と題した赤い雨傘運動が行われている。ミャンマーの活動家たちはリスクを負って、抵抗が続くことを示した。
◆マグウェー地方域ガンゴー(ဂန့်ဂေါ)郡区で、8888 運動35 周年を記念して蜂起。
◆11日、民主派僧侶らによる反クーデター革命の国内ストライキは、休みなく続き913日目。
武装抵抗・PDF・戦闘
◆11日午後11時、カレン民主同盟KNU第5旅団の影響下にあるカレン州パープン市所在の軍評議会の内務省、県総合行政局、入国管理局、会計監査局、法務局の建物で同時爆発が発生。職員は全員避難して負傷者はなし。KNUは職員らに対し、職務を続ければ安全の保障はないとの声明を出していた。
国際関係
◆MIMによると、5日、マレーシアのクアラルンプールで女性51人を含む429人のミャンマー国民が逮捕された。子供も含まれていたという。
◆東ティモールのシャナナ・グスマン首相は、ミャンマー問題が解決しなければASEANには加盟しないと述べた。
◆国連人権理事会による「ミャンマーに関する独立調査メカニズム」(IIMM) が報告書を発表。ミャンマー国軍の戦争犯罪は、「より頻繁で大胆に」なっていると。
◆韓国政府が防衛産業のPRイベントにミャンマー大使も招待したことに、国連機関が憂慮の書簡を送った。韓国は「兵器移転を許可するような、いかなる意図もない」と弁明。
◆Suebsaengタイ公正党議員は10日、国境付近に滞留しているミャンマー国内避難民約30万人がタイ側に流入した場合、受け入れられる状況にないとして、ミャンマー軍に対し国境5km圏内を緩衝(安全)地帯とするよう申し入れるべきとの提言を下院議長に提出。前提として軍による無分別な攻撃の停止があると。