2023年6月4日から6月10日までの1週間にミャンマーで起きたことです。
▼先月襲来したサイクロン「モカ」の被害は特にラカイン州で甚大で、国際的な支援も行われています。しかし、軍事政権はNGOの立ち入りを禁止するなどしており、被災者の多くは食料や飲水等の支援物資を受け取っていません。
▼先週開催された、中国が仲介する軍事政権とAA-TNLA-MNDAAの北部同盟との協議は、初日、軍事政権軍とMNDAAの間で戦闘が勃発して決裂しました。
▼バングラデシュ、インド、スリランカ、タイ、ミャンマー、ネパール、ブータンから構成されるBIMST-ECの設立26周年にあたり、各国が発表した声明では、軍事政権・指導者を正式なミャンマー代表だと受け入れています。また、9月に行われるASEAN合同軍事演習にミャンマー軍が参加すると、インドネシアが発表しました。
▼5月初旬以来、軍事政権は、抵抗勢力の拠点であるザガイン地方域、北部シャン州、カレン州全域の学校を標的とした空爆を強化しています。過去5週間で少なくとも6回の空爆を実施し、民間人8人が死亡、子供3人を含む8人が負傷しました。
目 次
国内情勢
◆中国の仲介で北部同盟(AA、TNLA、MNDAA)と軍評議会の間で3日間の協議が予定されていたが、初日の段階で協議内容で合意形成ならず頓挫。
◆5日、タイ国境ミャワディ県シュエコッコーとレーケーコーへのタイのメーソットからの電力供給が停止。タイ電力局とミャンマー民間会社との間の電力売買契約が在タイ・ミャンマー大使館により破棄されたため。横行するカジノや詐欺等の犯罪を防ぐために軍評議会が強硬手段に出たものと見られる。
◆7日、エーヤーワディー地域マウービン郡でアレーチャウン村周辺の深さ10kmを震源とするM4.8の地震があった。シュエポンミンパゴダ内の瞑想院を訪れていた女性修行者とティラシン(女性出家者)の2人が崩れ落ちた煉瓦塀の下敷きとなり死亡した。大きな揺れが4回あったという。
◆軍を離脱し解放区に逃れた下級伍長が隊内に蔓延る宗教、人種差別について証言。妻がイスラム教徒であると言うだけで昇格させてもらえない等の差別待遇があり、妻子がイスラム教徒を指す蔑称で呼ばれる等隊内で様々な嫌がらせを受けた。妻は上級将校の妻の主催する仏教行事や儀礼への参加を強要された。
◆チン民族戦線CNFは、軍評議会がチン州内で空爆を含む苛烈な軍事攻撃を行っている他、さらに兵力を増強しており、地元住民の車両の無断使用等が行っているため、基本的に州外からの訪問を禁じる方針を発表。 ただし訪問先やPDF等、軍に抵抗する組織からの証明書がある場合はこの限りではないという。
経済ビジネス
◆【ミャンマー】民主派政府、独自の中央銀行組織を設立へ(NNA)。新組織の役割は、中銀としての国際・国内業務、金融機関の監督と許認可、NUGの承認に基づく命令や規制、通知の発行とのこと。
人道問題
◆6日、日本外務省は、ミャンマー及びバングラデシュにおけるサイクロン「モカ」の被害に対する合計200万ドルの緊急無償資金協力を発表。今回の協力では、国連世界食糧計画(WFP)、赤十字国際委員会(ICRC)及び国際移住機関(IOM)を通じ、食料、水・衛生、避難施設への支援を実施するとのこと。
◆6日、ASEANは、5月にミャンマーを直撃したサイクロン・モカにより北部の避難民キャンプの仮設小屋が倒壊する甚大な被害があり被災者に対する164万ドルの人道支援を決めたと発表。16日〜22日にかけて、海上から食料や飲水等の支援物資が海上輸送で届く予定。
◆州政府が7日にサイクロン「モカ」被害者支援NGOのラカイン州立入りを承認した翌日、軍事政権は立入りの全面禁止を発表。ラカイン州北部では90%以上の家屋や建物が被災、2週間以上経った今でも多くの人は援助を受け取っていない。
◆サイクロン・モカの直撃を受けた西部ラカイン州ポンナーチュンの様子を映した動画。20日が経過した今も外部からの支援が届かず住民が自力で住宅を再建するなどして復興を図る。食料も不足している。
軍事政権による恣意的な逮捕、殺害、暴力
◆2日付政治犯支援協会AAPPの発表によれば、軍評議会は、クーデター発生から現在までに156人に対し死刑判決を言い渡した。うち42人は本人不在のまま判決が下された。モン州在住の18歳男性、ヤンゴン市在住の19歳の男性2人、全ビルマ学生連盟ABSDFメンバーの20代男性等若者が多く含まれる。
◆5月18日にバゴー地方のタウングー刑務所から10人の政治犯が逃亡に成功した。その後、軍事政権管轄の矯正局(Correctional Department)の命令により、刑務所内で拷問を含む虐待が急増していると伝えられている。
軍事政権による国民・財産への攻撃
◆5月28日、マグェー地域ガンゴー郡タウンキンヤン村の住民をタウンキンヤン警察が招集。軍製民兵組織ピューソーティーへの入隊を強要したため、住民全員が村を離れて逃げている。この住民の仮住まいとして、全ビルマ学生民主戦線ABSDFと地元国民防衛隊が共同で仮設小屋を建設し住民に寄付した。
◆5月31日、タニンダリー地域ダウェー郡ティンガンドン村をダウェー市から到来した兵員約150人で編成される軍部隊が小重火器で攻撃したことで住民1人が死亡、多数が負傷。さらに住民2名を拘束。住宅11棟を焼き、うち7棟が全焼。
◆1日〜2日にかけてシャン州北部マベイン郡アレーランボー村を軍が空爆。学校や診療所が破壊された。周辺で戦闘は起きていなかった住民は村外に退避し農地や森の中で野宿している。軍部隊が村に侵入しており村に戻れないため、負傷者の有無の確認ができないという。
◆4日午後4時頃、ザガイン地域キンウー郡カンティッ村に軍部隊が侵入し焼き打ち。2022年6月以降、4回目の焼き討ちとなる。住民によれば、今回は住宅を焼くに止まらず、仏像を叩き壊す行為があったという。
◆ザガイン地方域Kawlin郡区での軍事政権の空爆は民間人に壊滅的な影響を与えており、住宅1棟が全壊し、不発弾が残された。 “Kawl Info” は、6月4日の軍事政権の空爆中にウーミン村で10頭の牛が殺され、村の家が破壊されたと報じた。
◆7日、カレン民族同盟KNU第6旅団支配地域、カレン州ドゥーパラーヤー県コーカレイッ郡ハウンタヨー村落区ユワタンシェー村に軍が120mm迫撃砲を撃ち込んだ。住民宅に着弾し子供が1人死亡、住民2人が負傷。戦闘はなかった。 6日には軍がサンパラー村に戦闘機でクラスター爆弾を投下。小学校や民家が損壊。
◆7日午前中に軍部隊がザガイン地域サーリンジー郡モージョーピン村に侵入し、住民15人を拘束した後、同郡シュエタミン村に侵入し僧院を占拠。この軍の侵攻により周辺5村の全住民が村外に退避している。
◆7日正午、ザガイン地域カター郡ドービン村を軍が侵攻。 持参した名簿をもとに対象となる住宅に火をつけて回った。その後も軍は村内にとどまっており、住民は消火活動にあたることができないため、まだ鎮火していない。 同地域サーリンジー郡でも4日と6日に軍が村に侵入し、住民13人を拘束した。
◆3日から9日にかけてザガイン地域ウェッレッ郡内の4村を軍が襲撃し、住民7人を殺害。4村のうちナベービンフラ村の住宅全250棟中約80棟を焼いた。
◆5月初旬以来、軍事政権は学校への空爆を強化している。抵抗勢力の拠点:ザガイン地方域、北部シャン州、カレン州全域の学校へ、過去5週間で少なくとも6回の空爆を実施し、民間人8人が死亡、子供3人を含む8人が負傷した。
武装抵抗・PDF・戦闘
◆2日、シャン州第1特別区テインニー郡のMNDAA(ミャンマー民族民主同盟軍)基地を軍評議会が攻撃。MNDAAの兵士1人が死亡。4日現在も戦闘が継続。中国の仲介で北部同盟(AA、TNLA、MNDAA)と軍評議会の間で3日間の協議が予定されていたが、初日の段階で協議内容で合意形成ならず頓挫。
◆5日12:15頃、都市ゲリラ組織Brave Eagleがヤンゴン市中心部チャウダダー郡区パンソーダン通りとコンデー通りの交差点に所在する税務局3階で時限爆弾を爆発させた。これによりオフィサー3人、職員3人、他2人が負傷。同組織は、実行の目的を軍の行政機能の維持に加担する者を処罰するためだと発表。
◆6日午後8:45、ヤンゴン市インセイン刑務所の通用門付近の軍の警備隊を都市ゲリラ部隊が爆弾5発で攻撃。うち3発が爆発。怪我人の有無等は不明。 同日夜間、ニューダゴン郡区、フライン郡区でも爆発が起きた。
国際関係
◆2日-4日まで英国国際戦略研究所IISSが主催する第20回アジア安全保障会議(シャングリラ会合)がシンガポールで開催され、英米中日ASEAN加盟国等30ヵ国の国防トップが参加。昨年はミャンマー情勢が議論されたが今回は参加者が僅かに言及するにとどまった。ウクライナ問題が議論の中心。
◆BIMST-EC(ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ:バングラデシュ、インド、スリランカ、タイ、およびミャンマー、ネパール、ブータン)は、ミンアウンフラインと彼の政権をミャンマーの正式な政府・指導者として完全に正当化した。 BIMST-EC設立26周年に参加国が発表した声明にはっきり表れている。(Chindwin, 午前8:21 · 2023年6月7日)
◆ミャンマー軍、初のASEAN合同軍事演習に参加へ。 この地域において中国の主張をめぐり緊張が高まる中、東南アジア諸国が南シナ海で初の合同軍事演習を実施することで合意したとインドネシア当局者が8日に発表。実施は9月。
4-10/JUN/2023 #WhatsHappeningInMyanmar